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坐禅と坐禅の合間に行う、経行きんひんというものがあります。歩く坐禅とも呼ばれ、非常にゆっくりと歩くのですが、慣れていないとどうしても身体がふらついてしまいます。そうならないようにはどうすれば良いのか。ある1冊の本をヒントに考えていきます。

経行とは

経行とは、歩く坐禅とも呼ばれます。経という字に「縦」の意味があるように、真っ直ぐ歩くものです。臨済宗では走るようにしてこの経行の時間を過ごすということも言われているようですが、曹洞宗ではゆっくり歩きます。

 

歩くペースですが、一息半歩(いっそくはんぽ)と言われ、一息で足(の甲)の半分ほど前に出すというのが習わしになっています。具体的なやり方としては、息を吸いながら足を上げ、その足が接地し、息を吐きながら徐々に体重を移していくという説明がなされることが多いようです。この一息も坐禅中の呼吸を意識しなさいと言われます。呼吸をゆっくり行うのに伴い、歩くのもゆっくりになります。

 

坐禅堂(僧堂)の隣には経行廊下というものが設置されていて、経行は元々はそこで行われていたようです。現在の経行は修行道場でも坐禅堂にて行われています。

1冊の本との出会い

修行道場ではほぼ毎日のように経行を10分は行うのですが、一般の方はあまり機会がなく、なかなか慣れないこと多いでしょう。以前関わっていた坐禅会の参加者の方から「経行をしていると体がふらついてしまう」ということを言われ他のですが、その時は「慣れです」程度しか答えられず、歯がゆさを感じていました。

 

普段の日常では歩いている時に体がふらつくというのはあまり経験しないことです。ある程度の速さで走れば安定しますし、忙しい毎日の中ではなるべく速く歩こうとすることもあり、余計ふらつきは無くなります。しかし、そうした習慣のある人ほど、その速度を落とした時に体が安定しなくなるものです。自転車も漕いでいる内は安定しますが、速度が遅くなると安定感が失われます。

 

そのような中で出会ったのがある一冊の本です。それはメアリー・ボンドさんの『感じる力でからだが変わる 新しい姿勢のルール』です。ロルフィングという体へのアプローチを元にした本なのですが、ここでは歩くことについて非常に丁寧に説明がされていました。

 

その説明は歩くことについてはもちろん、経行中に体がふらつかないようにする上でも有益なもののように思われます。全てご紹介したいのですが、ここではその中でも3つのこと、「足と指のライン」「体重移動とプッシュ」「アウェアネスを持つ」を取り上げていきます。

足と指の間のライン

まず、息を吸いながら足を上げ、その足が接地し、息を吐きながら徐々に体重を移していくというのが経行でなされる説明だということを最初にお伝えしましたが、一口に足に体重を乗せていくといっても、どういう風に足を乗せていけば良いのか分かりません。以前ある方に話を伺った時は、足全体に「べたー」っと乗せると言われましたが、いまいちイメージが湧きませんでした。

 

この本で紹介されているのは、重要なのは踵かかとから人差し指にかけてのラインです。体重移動がこのラインの外側で行われているのか、それとも内側で行われているか。それが外側だろうと内側だろうと「足からのサポートが不十分」だというのです。

 

実際に踵から人差し指のラインに対してどのように体重移動をしているのか意識してみたところ、私は完全に内側になっていました。足の親指が大事という話をどこかで聞き、そのようにしていたのですが、なんとなく体がぎこちない感じになっていました。ふくらはぎに力が入り、自分でストッパーをかけているような感じがしていたのです。

反対にこのラインから外側を通るように意識してみると、今度は足の指が浮いてきてしまいます。これも足の余計な力を使い、思うように足が運べない感覚になりました。

 

そして、この「踵と人差し指」のライン上で体重移動意識してみたところ、違和感が減り、また足の指がしっかりと地面に着く感覚を得ることができました。無駄な筋肉を使っているような感覚も少なくなったように思います。

 

ただ、あまりこのライン上にこだわり過ぎるのもよくないかもしれません。ただ、単に「体重移動していく」と言われてもよく分からないという人にはおすすめです。いきなり自分の体重移動がどのようになっているのかを理解するのは難しいですが、踵から人差し指のラインに対してどうなっているのか、というは比較的分かりやすいのではないでしょうか。

体重移動とプッシュ

次がプッシュです。文字通り、押すということです。足を前に出す時は、足を上げて残った足が地面を押す(蹴る)ことによって前に進むことができる。これは十分な体重移動が前提となっていますが、経行ではこれが意外とできていないことが多いようです。

 

経行の際は動きが小さい分、片方の足を出すときは、足を上げることばかり意識がいきがちになります。右足を半歩出して、次に左足を上げる時、完全に右足に体重が移りきっていないのに左足だけ出してしまうような状況です。方足に完全に体重が乗り、自然と足がプッシュされ、反対の足が上がり、前に半歩進む。こういった流れになる方が良いと言えるでしょう。

 

実際にこれを意識すると、足を運ぶ際の体の安定感が増しました。足をすぐにつけなくては落ち着かないような感じも減ったようです。呼吸との連動もより心地の良いものに感じられました。余計な力が入らなくなったからなのでしょう。

 

足を上げる際にふらつく、という場合は息を吸いながら足を上げるのではなく、息を吸いながら残す側の足を押す、プッシュするという感覚で取り組んでみてはどうでしょうか。もちろん強引に押すのではなく、自然と押す感覚になるようなところまで体重移動ができていることが前提です。プッシュに余計な力がかかってしまうのであれば、それは体重移動が不十分なのかもしれませんね。

アウェアネスを持つ

経行のような小さな動きをする時、思わず上半身を強張らせていることもあるようです。上半身が強張るとバランスの維持が難しくなるため、ふらつきが生じてくることもあります。体を安定させるには上半身の力みが必要であると考えてしまいますが、それは不要な場合がほとんどです。

 

これに有効だと思われるのが、自分の体がどうなっているのかを感じることです。「身体のアウェアネス」と言われているものです。

 

先ほどは「踵と人差し指のライン」だけが問題になっていましたが、それ以外にも脛の筋肉、太ももの前側の筋肉、背中、首の後ろ、肩など様々なところが連動して「歩く」という行為につながっています。それは歩幅が狭い経行においても同じです。

 

体重移動を始めた時、またしつつある時、完了する手前、その時その時に自分の身体がどのような状態になっているのかを感じていきます。まずは足からやると良いでしょう。足の裏から脛、太ももの前、お尻など、足の筋肉の充実や動きを感じてみます。

 

次に上半身はどうなっているでしょうか。首の後ろ、肩、背中が歩くたびに動きます。そのなかで、無理な力が入っていることに気づくかもしれません。

 

自分の状態がどうなっているのかを感じることで、そこの強張りが緩んでくるのが不思議です。

 

ただ、いきなり「感じろ」と言われても難しいので、本では紹介されていませんが、実際に肩に触れてみたり、届くのであれば背中に手を当ててみても良いかもしれません。家族やパートナーと一緒にいる方は、互いに触れて教え合うのも有効だと思います。

 

また、身体が強張っているとしても、「これはダメだ」「緩め!」と思ってもなかなか上手くいかないものです。まずは自分の状態を感じ、知り、静かに呼吸をしながら「待つ」姿勢が大切でしょう。

まとめ

この記事では『感じる力でからだが変わる 新しい姿勢のルール』という1冊の本から経行について考えてみました。取り上げたのは踵から人差し指へのラインを意識すること、足を上げるのではなく、むしろプッシュする感覚、体の状態を感じること(身体のアウェアネス)の3つでした。

 

もちろん経行中は全くふらついてはいけないというものでもないでしょう。ただ、ふらつくというのは体が何かしら不要な力を入れていたり、上手く機能していないことのサインにもなっています。「経行が下手だ」などと考えずに、ふらつきも体からの送られる1つのメッセージだと思ってください。

 

坐禅もオンラインで行うことが増え、経行の機会はあまりないかもしれません。しかし、自粛の中こそ一歩一歩を丁寧に行ってみるチャンス。遠くまで行くことが憚られる中、小さな一歩の智慧を深めてみてはいかがでしょうか。


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