曹洞宗の朝のお勤め「朝課諷経」について解説!

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今回の記事は、以前に動画で配信した「【8分で解説】曹洞宗の朝のお勤めについて解説!】」を改めて文章でお伝えします!

 

動画だとわかりづらいところもあるかと思いますので、こちらも併せて読んでいただけたらと思います。

Contents

朝のお勤めの種類

私たちは朝のお勤めのことを朝課諷経ちょうかふぎん略して「朝課」と呼んだりしております。

この朝課は、各修行道場、各お寺で若干やり方や誦んでいるお経の違いがあるため、これが正しいというものはありません。

しかし、曹洞宗には行持規範ぎょうじきはんと呼ばれる、曹洞宗で行われている様々な法要や行持、檀信徒の葬儀などを定めた書物があります。

今回ご紹介するのはこの『行事規範』に書かれている朝課ついてご説明したいと思います。

『行持規範』では、5つの諷経を行うと定めています。

それは

・【仏殿諷経ぶつでんふぎん

・【応供諷経おうぐふぎん

・【祖堂諷経そどうふぎん

・【開山歴住諷経かいさんれきじゅうふぎん

・【祠堂諷経しどうふぎん

の5つの諷経です。

諷経を行う理由と回向について

諷経というのは、読経回向どっきょうえこうを行うことで、簡単に言いますとお経を読んで供養することを言います。

回向えこうというのは、【回転趣向(えてんしゅこう)の略で、「功徳を他へ回らし、さし向ける」という意味があります。

仏教では、自分を優先してしまう思いを払拭して、見返りを求めない行いが善い行いとされており、これにより功徳を積むことができると説きます。

功徳は見返りを求めない行いなので、自分のためとか、自分の利益のために行っては善い行いにはなりません。

一心にお経を読むことは、見返りを求めない善い行いとなり、その功徳を他者へ回らし、さし向けることを回向と言います。

曹洞宗では、四十九日法要や一周忌などの年回忌などの法事の際もそうですし、朝課などでお経を読んだ後には必ず「このお経をよんだ功徳は〇〇のために回向しますよ」という回向文を読みます。

読経は集まっているお坊さん皆んなで一緒に読みますが、回向文は基本的には1人でお唱えすることになります。

読経をして回向をするというのが、曹洞宗の諷経の基本的な構造になります。

朝課では5つ諷経を行うとお伝えしましたが、この5つの諷経についてなんの「お経を読んでいるか?何を対象に回向しているか?」について解説していきたいと思います。

仏殿諷経

仏殿諷経では、妙法蓮華経観世音菩薩普門品みょうほうれんげきょうかんぜおんぼさつふもんぼん」「大悲心陀羅尼だいひしんだらに」「消災妙吉祥陀羅尼しょうさいみょうきちじょうだらに」三遍(3回繰り返すこと)というお経を誦みます。

このお経を全て誦むとなるとこれだけで20分近くかかることになります。

なので、私が修行していた永平寺では、奇数日には妙法蓮華経普門品、偶数日には妙法蓮華経普門品偈を誦んでいました。

仏殿諷経の回向の対象は、曹洞宗が「一仏両祖いちぶつりょうそ」と崇めている、お釈迦様、永平寺を開かれた高祖道元禅師、また總持寺を開かれた太祖瑩山禅師、さらには土地の神様や様々な仏教を守護する神様に対して回向を行います。

仏殿とは、名前の通り仏様が祀られている建物になります。

元来、仏殿で行われていた諷経だと思われますが、今では法堂にて行う朝課の1番最初にお勤めされます。

仏殿諷経回向文
上来、妙法蓮華経観世音菩薩普門品・大悲心陀羅尼・消災妙吉祥陀羅尼を諷誦す、集むる所の功徳は、大恩教主本師釈迦牟尼仏(現座道場本尊云々)・高祖承陽大師・太祖常済大師に供養し奉り、無上仏果菩提を荘厳す。護法の諸天、護法の聖者、当山の土地護伽藍神、招宝七郎大権修理菩薩、合堂の真宰に祝献す。冀う所は、国土安穏・万邦和楽、十方の檀那・福寿長久、山門康寧・海衆安祥、法界の含識と同じく、種智を円かにせんことを。

応供諷経

応供諷経では、皆さんも一度は聞いたことがあると思いますが摩訶般若波羅蜜多心経まかはんにゃはらみったしんぎょうを誦みます。

応供回向の対象は、お釈迦様の十六人の阿羅漢あらかんに達した弟子と、それ以外の全ての阿羅漢に対して回向を行います。

阿羅漢とは、仏教において最高の悟りを得た、尊敬や施しを受けるのに相応しい聖者という意味があり、この阿羅漢のことを別名「応供」と言います。

応供諷経回向文
仰ぎ冀くは照鑑、俯して感応を垂れたまえ。上来、摩訶般若波羅蜜多心経を諷誦す、集むる所の功徳は、十方常住の三宝、果海無量の賢聖、十六大阿羅漢、一切の応供部類眷属に回向す。冀う所は、三明六通、末法を正法に回し、五力八解、群生を無生に導き、山門の二輪常に転じ、国土の三災永く消せんことを。

祖堂諷経

祖堂諷経では、中国唐代の禅僧:洞山良价とうざんりょうかいが書かれた「宝鏡三昧ほうきょうざんまい同じく中国唐代の禅僧:石頭希遷せきとうきせんが書かれた「参同契さんどうかいという漢詩になりますが、この漢詩をお経として奇数日偶数日と交互に読経します。

祖堂諷経の回向の対象は、仏教を伝えて来られた五十七仏に対して回向を行います。

五十七仏とは、お釈迦様がこの世に現れるまで出現した七人の仏(過去七仏)、そしてお釈迦様から道元禅師まで脈々と伝灯を受け継いで来られた五十人の歴代仏祖、歴代祖師のことを言います。

ただ、祖堂諷経を行う際は、そのお寺を開かれた住職の師匠までお唱えすることになるので、永平寺では道元禅師の師匠の天童如浄まで、總持寺ですと瑩山禅師の徹通義介禅師まで、その他のお寺はそこからさらに伝灯を受け継いで来られた祖師方もお唱えすることになります。
それぞれのお寺で、五十七仏からさらにそのお寺を開かれた住職の師匠まで、伝灯を受け継いで来られた祖師方の名前もお唱えすることになります。

祖堂諷経回向文
仰ぎ冀くは真慈、俯して照鑑を垂れたまえ。上来、参同契・宝鏡三昧を諷誦す、集むる所の殊勲は、
(五十七仏を一同合掌にて誦む)
伝灯歴代仏祖の為にし奉り、上み慈恩に報いんことを。

開山歴住諷経

開山諷経では大悲心陀羅尼だいひしんだらにを誦みます。

陀羅尼とは、古代インドで使われていたサンスクリット語を意訳せずそのまま漢字をあてはめて誦むお経です。

開山歴住諷経の回向の対象は、名前の通りお寺を開かれた住職から、現在の住職の師匠までの歴代住職に対して回向を行います。

このように、祖堂諷経、開山歴住諷経では、五十七仏から現在の住職に到るまで、教えを受け継いで来られた全ての歴代の仏祖、祖師方に対して読経回向を行います。

これは、禅宗という宗派が特に系譜を重んじて信奉している宗派のため、毎日こうして読経回向を行います

開山歴住諷経回向文
仰ぎ冀くは真慈、俯して照鑑を垂れたまえ。上来、大悲心陀羅尼を諷誦す、集むる所の殊勲は、
(開山住職、以下歴代住職を誦む)
各々大和尚の為にし奉り、上み慈恩に報いんことを。因みに某大和尚に資薦して、品位を増崇せんことを。

祠堂諷経

祠堂諷経では「妙法蓮華経如来寿量品偈」を誦みます。

祠堂諷経の回向の対象は、歴代住職以外の様々な形で関わったお坊さんや、お寺を開く時に多くの寄進した開基さん、さらにはお寺のお檀家さん達のご先祖さまに回向します。

祠堂諷経回向文
仰ぎ冀くは三宝、俯して照鑑を垂れたまえ。上来、妙法蓮華経如来寿量品偈を諷誦す、集むる所の功徳は、当山亡僧法界亡僧伽等各々品位、当寺開基何々、万国殉難者諸精霊、当寺結縁祠堂の檀那、合山清衆の六親眷属七世の父母、法界の含識に回向す、同じく菩提を円かにせんことを。

まとめ

曹洞宗の朝課は以上の5つを基本に行っており、法華経般若心経陀羅尼から、禅宗の祖師が書かれた漢詩に至るまで様々なお経を読み、そしてその対象に回向しています。

お経の意味や内容よりも、あくまでも一心に読経によることによる功徳をめぐらすということが大切になってきます。

なので、行事規範で定められている諷経やお経は今回ご紹介した内容になりますが、各修行道場や各お寺での朝課では、お勤めの仕方やお経が違うところもあると思います!
もし、曹洞宗のお寺で朝課に参加する機会がありましたら、何のお経読んでいるのかな、回向はどんなことを唱えているのかなというのを聞いてみてください。合掌

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