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久保田の趣味はスポーツ観戦。

実際に現地に足を運んで現場の空気を楽しむのも好きですが、家でリラックスしながらテレビやパソコンで視聴する方が好みです。

よく視聴するのは、プロ野球、社会人野球、高校野球、MLB、F1、インディカー、ロードレース、格闘技、大相撲など。

またスポーツのカテゴリーからは少々逸脱してしまうかもしれませんが、将棋、麻雀、e-sports(RTS)などもよく見ます。

 

これらの競技に共通して言えることは、

勝負の駆け引き、

戦略の応酬、

などをじっくり楽しめる点。

選手の実力、実績、データ、選手の心境、時の運までも考慮に入れつつ、

選手やチームの立てた戦略がうまく機能するかどうか、自分ならどうするか、

予想を立てたり、妄想したりしながら観るのが、とても楽しい時間です。

 

ところで、近年のスポーツは(スポーツに限らず)コンピューターの計算をもとにした数値による分析が幅を利かせるようになってきました。

これはスポーツ観戦をしながら戦略の効率・非効率、勝敗の行方を占うにあたっても同様で、

特に野球や将棋、モータースポーツなど分析がさかんな競技においては、数値を知って観るのと知らずに観るのとでは、観戦の仕方に大きな差が生まれます。

ということで今回は、スポーツにおける分析数値について、野球の送りバントと将棋の評価値から考えていきます。

是非が問われる、ランナー一塁からの送りバント

まずは野球の送りバント。

ランナーが一塁に出塁して、次の打者がバントでランナーを送る。

高校野球やプロ野球でよくみられる光景ですが、このランナー一塁からの送りバントには、現在のようにコンピューターによる分析が幅を利かせる前から、疑問が呈されていました。

それは、

「バントをすることで得点期待値が下がる」

「バントをすることで少なくとも1点を入れる可能性すら下がることがある」

ことから、

「ランナー一塁からの送りバントは戦略として採用するに値しないのではないか」

というもの。

 

たとえば、日経新聞のこちらの記事では、送りバントの損益分岐点が「1割3厘」であるとする分析を紹介し、その上で送りバントについてこのように結論付けています。

送りバントは極端に打力の乏しい打者を除けば合理的とも手堅いともいいがたい。攻撃の選択肢の上位にくるべきものではないが、使いようによっては駆け引きの材料となって野球を面白くする。それは攻撃の定番ではなく、奇策というべきものなのだ。※「実は手堅くない送りバント「損益分岐点」は打率1割」より

記事ではこのように書かれています。

しかし、この分析には多くの見落としがあるように感じられました。

見過ごされている、数値に表れない要素

その見落としとは、この分析には数値に表れない、あるいは数値化することが難しい要素が含まれていないという点です。

 

たとえば、

送りバントによって走者を得点圏に置くことで守備側に与える精神的プレッシャーや疲労の蓄積

作戦が「成功しやすい」点

送りバントに対処する守備シフトにおいて、高リスクとされるバスターやエンドランの成功率に影響を及ぼす可能性

などです。

 

私はこの中でも、送りバントが持つ大きな特徴のひとつである、「成功しやすい」点に注目したいと思います。

これは「狙い通り」という状況を生み出す可能性が高いということ。

1アウト2塁として、仮にその後、得点には至らなかったとしても、戦略としては成功の段階を踏んでいるということになります。

よく「流れを引き寄せる」ということがまことしやかに言われますが、

もし勝負に流れというものがあるのだとしたら、「作戦の成功」はその流れを左右する重要なファクターとなるのではないでしょうか

ただ、これは勝敗を徹底的に追及するプロ野球においてはナンセンスな要素と思われる方も多いかもしれません。

しかし教育としての要素を強く持つ高校野球においては、選手に成功体験をさせることは大きな意味を持つのではないでしょうか。

 

また、送りバントをすることによって「少なくとも1点入る確率」については、

諸説ありますが、プロ野球については微減するものの、高校野球においてはむしろ逆に上がるとする統計結果も出ています。

バントにかかわる分析のサンプル数を増やして、試合展開や打者の能力、投手の能力(防御率、奪三振率)などを細かく検討していけば、

送りバントが「場面によって、少なくとも1点を取るためには有効」となる可能性は高いのではないでしょうか。

 

というわけで、

分析に表れない試合状況や選手の心境によっては有効に機能する可能性がある。

これまでの研究のみでは送りバントの是非について結論付けることができない。

野球の送りバントについては、以上のように考えます。

将棋の評価値について

さて、続いては将棋の評価値についてです。

近年ではAbemaTVが、毎日将棋の中継や録画再放送を配信しており、過去に比べて棋士の息詰まる一戦がより身近なものになりました。

その中で目にする、過去の将棋中継になかった新たな要素が、AIの分析による形勢の評価値です。

中継をご覧になったことのある方はご存じでしょうが、最近の将棋中継ではAIによる形勢判断の評価値が画面上部に常に表示されています。

これはNHKの将棋中継でも導入され、評価値は将棋ファンにとって、とても身近なものになりました。

導入当初は「盤面を自分で読む楽しみが減ってしまう」「次の手を予想する楽しさを奪う」など否定的な意見も多く見られたように思いますが、現在ではおおむね好意的に受け入れられているように感じます。

私はこの評価値による形勢判断が、将棋を観戦する楽しみを多くのライトユーザー(たとえば、藤井聡太さんの活躍から将棋に興味を持った人など)に教えてくれたと思っています。

私自身、将棋の腕前は大したことがなくて、

評価値導入前は盤面を見ても形勢を判断することが難しく、

大盤解説を鵜呑みにすることくらいしかできませんでした。

自分が楽しむにはハードルが高すぎる競技だと感じていたのです。

しかし現在はこの評価値と、同じく画面上に表示される候補手を頼りに、解説を聞かなくても大まかな形勢判断ができるようになってきました。

そうなると棋士の指す一手一手に込められた意図のようなものがそこはかとなく伝わってくるように感じられ、将棋がいっそう面白いものになるのです。

「ここは安全策を取ったか!」

「ここでリスクを取って攻めに出たか!」

こんな風に、他の様々なスポーツと同じく将棋観戦を楽しむことができるようになったわけですが、

そのなかで面白いことに気が付きました。

AIの示す最善は、人間にとっての最善ではない

それは、AIの示す最善手は、必ずしも人間にとっての最善手にはならないということ。

さきほど言ったように、評価値によって「どっちが指しやすいか」「どちらが優勢か」「どちらが勝ちそうか」「詰みへの手筋があるか」など大まかな形勢判断ができるのですが、

ときに評価値では大きく勝っているはずの棋士が、負けているはずの棋士から追い込まれているかのような場面が生まれるのです。

それは例えばこんなケースです。

制限時間が迫っている状況で、AIが優勢を示す棋士に正解の手筋が1通りしかないのに対し、劣勢の棋士はいくつかある候補手から選ぶことができる。

AIの示す最善手が難解すぎて、その後の変化を少しでも読み違えれば負けてしまうようなリスクの高い手である場合。

その他にも、AIが示す最善手ではないが、盤面をより複雑難解にして相手にプレッシャーをかける意味のある指し回しや、

自分は読みやすく相手は読みづらい手を指して、制限時間による攻めが期待できる指し方などもあります。

 

このようにAIの評価値と人間が指す手の違いに気付いた時、何となく分析や数値との正しい付き合い方が見えたように思いました。

MLBと日本のプロ野球

ここで話は野球に戻ります。

近年、数値による分析は野球界、特にMLBにおいて大きな変化をもたらしました

それはフライボール革命と、極端なシフト守備の実行、走塁と守備に優れた選手の価値喪失などに代表されます。

 

フライボール革命は、ゴロになる打球よりもフライになる打球を打った方が得点期待値が上がるという研究結果をもとに、

多くの打者が高角度の打球を狙うようになったことを言います。

極端なシフト守備とは、当該打者の打球方向の偏りに合わせて、守備位置を本来の場所から大きく動かして守るということ。

また分析によって「走力が得点に貢献する割合は低い」ことや「盗塁のリスクの高さ」が明らかになり、またシフト守備の影響からそうした選手の打率も下がってしまったことから、いわゆる「いぶし銀」のような選手はその価値を大きく損ねました。

 

分析による数値にしたがい、プレースタイルを変える。

これはいかにも合理主義的で、なんともアメリカらしいエピソードに思えます。

これら一連の変化は、三振とホームランの増加をもたらし、インプレーの打球を減らしました。

その結果として、試合展開が大味かつ単調になり、MLBの人気は大きく下がったと言われています。

 

一方で、分析による非効率が叫ばれつつもいまだ送りバントが生き残る日本球界はどうでしょうか。

さきほど「送りバントもそんなに悪くないんじゃない?」ということを書いたにもかかわらずということになりますが、

観戦する立場として、ときに送りバントはとてつもない「興ざめ」を生みます。

それが、送りバント失敗のケース。

バント失敗で送れずならまだしも、ダブルプレーになった日には目も当てられません。

もちろん数値だけに囚われず、戦略のバリエーションやその他様々な要素を鑑みてということになりますが、

送りバントという戦術の運用方法は見直される必要もあると思います。

まとめ

最新の理論や研究結果は、しばしば様々なものの捉え方に影響を与えます。

とくに合理的なものや新しいものは、爆発的な勢いを持って広がることがあります。

その中で、旧来の考え方や慣習にしがみつくのもよくないと思いますが、

新鮮さや合理性だけを見て、新しいものばかりを受け入れるようなあり方にも疑問があります。

 

たとえば、

合理性に舵を切ったMLBは人気を失ったと言われますが、

逆に日本のプロ野球界が何も変わらないでいれば、マンネリ化につながり、その人気も失われる日が来るかもしれません。

そうならないためには、

将棋における評価値のように、評価は評価、数値は数値というように、あくまでAIにとっての正解として参考にしつつ、人間にとっての正解は別にあるする、

このような態度が求められているのではないでしょうか。

 

世の中が目まぐるしく変化する中だからこそ、古いモノ、新しいモノ、どちらにも執着せず、常に両者のバランスを計ることが必要なのだと思います

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