前回の記事は西田さんによるこちらの記事↓
昔話「鶴の恩返し」を仏教的に解釈するというものでした。
タイムリーなことに、今回の記事も、昔話をテーマにしています。
……と言っても、取り上げるのは昔話をモチーフにしたTVゲーム「桃太郎電鉄」。
その中に登場する「キングボンビー」について久保田が考えていきます。
Contents
年末の定番!桃鉄!
桃太郎電鉄。(通称、桃鉄)
もはや定番と言ってもいい、コンピューターボードゲームの金字塔です。
ゲームの目的は「豊かな日本に発展させる開発をするために、日本中を鉄道で回って物件を買い集める」こと。
プレイヤーは社長さんとなって電車に乗り、全国の駅を巡りながら、
ご当地の産業物件を買い求めて資産を集め、会社を大きくしていきます。
スゴロクの楽しさと、自分の資産が増えていく喜びを味わえる桃鉄は、
ファミコンの時代から今に至るまで、多くのゲームファンを魅了してきました。
かくいう久保田も、子どもの頃から桃鉄が大好き!
これまでに桃鉄を遊んできた時間は、ゆうに1,000時間を超えるでしょう。
全国の主要な地名を桃鉄で覚えたのは勿論のこと、日本各地の名産・名物を桃鉄によって知り、
見たこともない土地の様子を想像し、胸を踊らせていました。
桃鉄に登場する様々なキャラクターたち
さて、そんな桃鉄ですが、その魅力の一つには多くのキャラクターが登場するということが挙げられます。
金太郎、浦島太郎などの日本の昔話に登場するもの。
天邪鬼、福の神、貧乏神、仙人といった神話や伝説に由来するもの。
またドジラ、モモトラマンなどのパロディキャラクター、
その他、数々のオリジナルキャラクターも登場します。
そして今回注目する「キングボンビー」はオリジナルキャラクターのひとり。
もとは、プレイヤーの電車にとりついて邪魔をしてくる「貧乏神」なのですが、
その「貧乏神」が突然変身して「キングボンビー」へと変わります。
貧乏神のいたずらが、
「倒産が怖いので半額で物件を売ってきてあげた」
「良さそうなカードを売っていたから2倍の値段で買ってきてあげた」
という微笑ましい(?)ものであるのに対して、
キングボンビーがプレイヤーに対して行う妨害行為はまさに「苛烈」の一言!
出鱈目、理不尽としか言いようがないほどの悪行をプレイヤーに仕掛けてきます。
げに恐ろしきキングボンビーの悪行
見るからに恐ろしいキングボンビー。
その1番の悪行はお金を捨ててしまうこと。
「グエッヘッヘ!ボンビラスの世界ではお金などいらぬのだ!」
「サイコロを10個振り、出た目の分だけお金を捨ててやる!」
キングボンビーがこのセリフを吐いたら、プレイヤーは覚悟を決めるしかありません。
あとは小さい出目を祈るのみです。
コロ、コロ……とサイコロを転がし……
出目を確認したキングボンビーは、
「35か、では123億4000万円捨ててやる!」
と、情け容赦なく、けた外れの金額を捨ててしまいます!
(捨てるどころか、持ち金が足りなければ借金まで負わされる。)
さらに、時には、
「あ~!今日はいい日だ!もう一回サイコロを振りたくなってきたな!」
「振るかな!?」
「やめるかな!?」
「グェッヘッヘッヘ!よろこべ!もう一回振ってやるぞ!キーングボンビー!」
(※キングボンビーの台詞は久保田の記憶によるものです。細部が違ってもご容赦を。)
と、このように何度もサイコロを振らせ、プレイヤーの経営とメンタルに大打撃を与えてきます。
そんな憎っくきキングボンビー、な訳ですが……
ある出来事をきっかけに、実はこのキャラクターこそが
桃太郎電鉄の最重要キャラクターなのではないか、と久保田は考えるようになりました。
キングボンビー=最重要キャラ?
久保田がこう思うようになったのは、ある出来事がきっかけ。
その出来事とは、超低確率でキングボンビーが仕掛けてくる
「最強の悪行」を自分自身が受けてしまったことです。
その最強の悪行とは……
「壱兆円を捨てる」
というもの。
もちろん、それまでにコツコツ積み上げた資産はほとんど全てパァ。
順位も一位から最下位へ一気に転落。
あまりにもあんまりな仕打ちに対して、
普通ならば怒りがこみあげてくるように思いますが、その時久保田は……
「アッハッハ!これは参った!まさか壱兆円とは!」
「さすがはキング様だ!スケールが違う!」
と、むしろキングボンビーの行為を受け入れていたのです。
そして……
キングボンビーに壱兆円を捨てられてからしばらくたって、
久保田の中にある気づきが生まれました。
「まてよ、ひょっとしてキング様がお金を捨てるのは……」
それからというもの、キングボンビーがただの憎まれキャラではなく
重要な意味を持ったキャラクターとして映るようになりました。
また、ここでは割愛しますが、過去に遊んだ「桃太郎伝説外伝」というロールプレイングゲームも、
そう考えるきっかけだったように思います。
(追記)↓書いちゃいました
桃鉄の負の側面
話は少し戻ります。
はじめにゲームの目的を
「豊かな日本に発展させる開発をするために、日本中を鉄道で回って物件を買い集める」
と書きましたが、それはあくまで建前の話。
実際には、プレイヤーとコンピューターで
集めた資産の総額を競って一位を目指す
というのがこのゲームの本質です。
そうなると、必然、プレイヤーは
「いかにして金を集めるか」
「ほかのプレイヤーを追い落とすにはどうすればよいか」
を考えて行動するようになります。
桃鉄は優れたボードゲームですが、友情破壊ゲームと称されることもあります。
久保田も幼い頃、桃鉄によって兄弟や友人とケンカをしてしまったことがありました。
ゲーム内の争いが現実にまで影響してしまうのです。
また桃鉄の性質上、負けているプレイヤーが這い上がるのは難しく、
勝っているプレイヤーであっても、自分の資産が奪われ転落すること
に常に怯えることになります。
現実・ゲームを問わず、これは金銭への執着が生み出す苦しみに他ならないのではないでしょうか。
キングボンビーの本当の役割
お金の必要ないボンビラスの世界に生きるキングボンビーには、
お金を求めて争う社長たちが哀れに見えるのでしょう。
キングボンビーがプレイヤーのお金を捨てるときに放つセリフ、
「グエッヘッヘ!ボンビラスの世界ではお金などいらぬのだ!俺様が捨ててやる!」
からは、キングボンビーがあくまで親切としてお金を捨てているということがわかります。
お金を捨てるという悪行は、金銭への執着に苦しむプレイヤーに差し伸べた
キングボンビーなりの救いの手であるのかもしれません。
勝ちたい、資産を得たいという欲が高まり切ったプレイヤーに対して、
お金を捨てる、という実力行使に出るキングボンビー。
その姿は、仏教で言えばまるで明王様のそれではないでしょうか。
明王様は恐ろしい姿で仏教に帰依しないものを調伏し、
教えに目覚めさせるという性質を持った仏様です。
キングボンビーが「お金を捨てる」のは、
「ちょっと落ち着きな」
「そんなもんにこだわっていても仕方ないぜ」
「ほどほどに楽しみなよ」
ということを何とかして伝えようとした結果なのではないでしょうか。
現代人である私たちの生活はお金なしには成り立ちません。
経済によってもたらされる豊かさを享受しながら私たちは生きています。
しかし一方で、欲をかきすぎると自らを滅ぼすということも事実。
ありきたりなまとめではありますが、ほどほどの距離を取ってお金に向き合っていきたいものです。
……ところで、
桃太郎電鉄の新作が今年、登場するようです!
Nintendo Switchでリリースされるようですので、
興味のある方は是非、公式HPを覗いてみてください!
そしてなんと、この記事が核心をついていたんじゃないかという進展がありました!
ぜひ続編のこちらの記事もごらんください!
動画版はこちら!
それでは!