「サーモンを食べて号泣するヴィーガン女性」の動画について考える

広告

このブログをご愛読いただいている皆様はご周知の通り、普段から自分の課題の一つとして食についてあれこれ考えている私。

様々な食文化や食の信条・主義についても色々調べることがあるのですが、昨日こんな話題が目に入りました。

「お魚さん、ごめんなさい」健康上の理由でサーモンを食べたヴィーガン女性が大粒の涙(リンク)

TikTokに投稿された動画きっかけとなったこちらの話題について、今回は考えてみたいと思います。

ニュースの概要

今回は元の動画にたどり着くことができなかったので、いくつかのニュース記事を合わせて事の概要を見てみましょう。

ニュースのきっかけは先月2021年9月13日、TikTokへ投稿されたとある動画でした。

アメリカ在住のラマー・チャイレス(Lamar Chairez)さんは、
2年ほどヴィーガンとして動物性食品を口にしない生活をしてきたそうです。

ところが、最近アレルギーや過敏症などの体調不良を起こし、医師から食生活を見直すよう診断されます。

それにあたってサーモンの切り身をソテーにし、口にする様子を動画として撮影し、TikTokへ投稿しました

調理をする様子から撮影をし、ラマーさんはいよいよサーモンを口運ぼうとしますが

「私の身体は食べるに耐えられない物を食べようとするために、更なるダメージを受けている感じがします。でも、最善は尽くすけどね(笑)。食べてしまったわ。もう今の私って、これまでに最も情けない人間だわ。お魚さん、本当にごめんなさい。」

と、ためらいや後悔の言葉を口にし、ついにサーモンを一口食べると、大粒の涙を流しながら泣いてしまいました。

この動画は現在1700万回を超える再生回数となり、ヴィーガンからは動物性食品を口にしたことを非難され、
ヴィーガンでない人からは「みんな泣かずに感謝しながら食べているんだ」「あなたが食べなければ他の人が食べた命だ」といったコメントが寄せられたようです。

引用:https://japan.techinsight.jp/photos?t=820383&i=1

藤原道長と薬食い

実は、こうした菜食主義の方が健康上の理由で動物性食品を摂ることになり、
心を痛めるというケースは現代のヴィーガンに限った話ではありません。

平安時代、三人の娘を皇后にし、朝廷内で絶大な権力を誇った藤原道長ふじわらのみちながは、熱心な仏教徒としても知られます。

当時の日本仏教は貴族による信仰が中心となっていて、
帰依することで一族の安泰や死後の極楽浄土への往生が強く信じられていました。

その信仰の中でも重要視されていたのが、禁肉食です。

藤原道長は贅沢三昧で乳製品の蘇に蜂蜜をかけた、今でいうクリームチーズの蜂蜜がけのようなものが大好物で、
日本の歴史で確認できる最古の糖尿病患者とも言われています。

現代の私たちからするとそれって菜食なの?という印象を受けますね。

ところが、当時は肉食というのはあくまで獣や鳥、魚の肉を意味しており、「動物性」という区別はされていなかったようです。

さらに言えば、肉の中でも獣>鳥>魚というように、食べる罪の重さにも違いがあったことが推測されます。

そんな社会にあって、道長は蘇の蜂蜜がけを大量に食べて糖尿病にはなっていても、仏教徒として禁肉食を貫いていました。

ところが、病状が悪化する中で目が見えにくくなると、現代の医師にあたる人から健康のために魚を食べるように勧められます。

当時は僧侶も「僧尼令」によって朝廷から肉食を禁止されていましたが、健康上の理由で薬を口にすることがありました。

この薬が肉や魚で、薬を口にした場合は一定期間宗教施設や朝廷から隔離されることが定められており、
このシステムを「薬食い」といいます。

道長は涙を流しながらこの薬食いを行ったそうです。

それによって病状が回復することはなかったものの、今回の動画と通じるものがあります。

現代では肉食の解釈が広がり、精進料理では蜂蜜や乳製品を使うことはないようです。

そう考えると蘇の蜂蜜がけを大量に食べながら、肉食は涙を流すほど避けていたという矛盾が生じているようにも思えますが、
それが当時の信仰の形だったのです。

参考記事:糖尿病で亡くなった藤原道長。原因は贅沢三昧の食生活だった?

動画投稿にする必要性

藤原道長のエピソードを踏まえると、今回のラマーさんの反応は決して大袈裟なものではなく、
ご本人にとっての一大事であったことは想像に難くありません。

ただ、私にはどうしても理解できない点があります。

それはご自身にとって涙を流すほど罪悪感を抱える行為を、動画撮影してTikTokという娯楽性に強い媒体に投稿した点です。

YouTubeやSNSを活用している自分に置き換えた時、仮に仏道に背くような行為をしなければならないとして、
それを動画投稿にするだろうか、と考えるとどうしても共感しかねます。

抱えきれない罪悪感を、同じヴィーガンの人が「健康のためなら仕方ないよ」と励ましてくれることを想像したのでしょうか。

それとも、初めから話題性を狙ってのことだったのでしょうか。

それは私にはわかりません。

ただし、結果的にはヴィーガンからの批判コメントが多くなり、現在はコメント欄を閉鎖したとのことですので、
もしかするとその苦悩を誰かが和らげてくれると考えたのかもしれません。

まとめ

今回、ラマーさんが動画を投稿した思惑と結果が一致したかどうかは、ご本人にしかわかりません。

しかし、周囲の反応は決して優しいと言えるものではありませんでした。

批判的だったヴィーガンの人は、動物の命を大切にするようにラマーさんの健康を心配するくらいの気遣いがあってもよかったでしょうし、
それ以外の人もラマーさんがヴィーガンとして禁を破ることを嘲笑するのではなく、少なくともスルーできればよかったのに、とも思います。

いずれにせよ、特定の思想や主義・信条を大切にする人に対して、周囲が優しくないニュースだったな、
というのが私の印象です。

ちなみに後日、ラマーさんは今度は涙を流さずエビを食べて「なかなか美味しかった」と言っていたそうです。

獣>鳥>魚という肉食の順位は潜在的に現代の受け継がれているのかもしれませんね。

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事