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大人から子どもまで日本人の多くが日常的に楽しむ大衆娯楽、マンガ

今やマンガはサブカルの域を超え、立派なカルチャーの一つとなりました。

新企画「このマンガを読んでほしい!」は、

禅活の中でも幼少より多くのマンガに親しんできた久保田による、

おすすめマンガ紹介記事です。

第一回は西岸良平による「三丁目の夕日」

「ALWAYS~三丁目の夕日」として映画化もされた、この超長期連載作品を紹介します。

「三丁目の夕日」とは

小学館ビッグコミックオリジナルにて1974年から連載されている、一話完結型のストーリー集です。

単行本は67巻まで発売されており、現在も連載継続中となっています。

公式HPより

その物語は……

昭和30年代の日本のどこかにある架空の町、夕日町三丁目。

そこに暮らす人々の群像劇が「三丁目の夕日」です。

子どもが主人公の回もあれば、大人、お年寄り、はたまた三丁目に暮らす動物が主人公の場合もあり、

その回ごとにバラエティーに富んだストーリーが展開されます。

三丁目の住人がそれぞれに生きていく中で、

悩んだり、迷ったり……

喜んだり、悲しんだり……

様々な人間模様が、作品を通じて描かれています。

また、特徴的なキャラクターの造形には不思議な温かみがあり、

CG全盛の時代にそぐわない手書きの良さを感じさせてくれます。

「三丁目の夕日」を取り上げた切っ掛け

今回「三丁目の夕日」を取り上げようと思ったのは、

久々にコミックスを開き、

適当に何冊か見繕って読んでいた時に、

作品を受け止める自分の変化に気が付いたからです。

子どものころ、父が買ってきた「三丁目の夕日」を読むときは、ストーリーに明確な好き嫌いがありました。

当時、大人同士の恋愛模様や家庭の事情を描いたストーリーはどうしてもつまらなく、

一方でメンコやベーゴマ、駄菓子屋でのくじなど、子どもの遊びに触れたストーリーはとても魅力的なものとして映っていました。

しかし今、あらためて読んでみると、どのストーリーも同じく輝いて見えました。

子どもを主人公としたストーリはどこか切なく、

青年を主人公としたストーリーは甘酸っぱく、

大人が主人公の作品には共感を抱くようになりました。

さらに、そのどれにも優しさを感じるのです。

ページを開くごとに揺さぶられていく自分の心が新鮮で、

この感覚を誰かに伝えたいと思ったのです。

「三丁目の夕日」のここがスゴイ

「三丁目の夕日」の特筆すべき点の一つは、その変わらなさにあるでしょう。

およそ50年(!!!)という連載期間の中で、もちろん初期と比べると絵柄や、コマ構成などにわずかな変化は見られます。

しかし1980年代に描かれたものと、2010年代に描かれたものを読み比べても、違和感は全くありません。

どれだけ時代を隔てても、そこに同じ「三丁目の夕日」があるのです。

「三丁目の夕日」と同じく一話完結型のストーリー集であり、三年前に連載終了を迎えた「こち亀」では、

主人公の両津勘吉は大きく変化しました。

連載初期は、勤務中にタバコをくわえながら競馬中継を聴き、夜のお店の話を嬉しそうにするようなハチャメチャ警察官だった両さんが、

いつの間にかタバコも止め、女性にもモテている、面白警察官に変わっていました。

時代の変化も描く「こち亀」が変化する一方で、

常に昭和30年代の時間軸にある「三丁目の夕日」が変化しないのは、

当然のことなのかもしれません。

しかし……

私の知る両さん(単行本60~100巻あたり)がいつの間にかいなくなってしまった一方で、

どの単行本を開いても変わらない「夕日町三丁目」の姿には安心感のようなものを覚えるのです。

公式HPより

失ってしまった何か

「三丁目の夕日」のすごさは、その変わらなさだけではありません。

三丁目には、多くの「失ってしまった何か」が登場します。

今では見かけることも少なくなった、近所の頑固おやじ、御用聞きの酒屋さん、街の駄菓子屋さんなど、かつては確かに存在したものがあり、

あるいは、UFO、謎の科学者、妖怪、幽霊屋敷、7不思議、サンタクロースといった超常の存在も当然のように登場します。

さらにはお釈迦様、閻魔様、観音様、神話の神様といった日本の信仰の対象が現れる仏教説話のようなストーリーまで存在します。

過去にはあって、今はなくなってしまったもの。

空想の中だけのもの。

子どもの頃には存在すると信じていたもの。

信仰の対象であるもの。

こうしたものすべてを夕日町三丁目は残しているのです。

「三丁目の夕日」が、ただの昭和30年代の社会を映した生活記録にならないのは、

空想も、SFも、伝承も、事実も、信仰もすべて受け止める、懐の深さがあるからなのだと思います。

「三丁目の夕日」の暖かさ

私たちが生きているこの世の中は「無常」です。

当然、昔と全く変わらぬままでいられる人はいませんし、

逆を言えば変わりゆくからこそ、人は成長できるのです。

しかし人が成長し、大人になっていく過程には絶大な変化を伴います。

もちろんその間、周りの環境もことごとく変わっていきます。

仲の良かった友達、故郷の街並み、社会のシステム。

様々なものが移ろいゆき、変わりゆく現実を目の当たりにするほどに、

人はどこかに大切なものを置き忘れてきたのではないか、失くしてしまったのではないかという不安を、無意識のうちに抱いてしまっているのかもしれません。

特に、現代社会は変化のスピードが著しく早くなっています。

つい先日まで常識だったことが、気が付けばまったく通用しなくなっている。

そんなことも日常茶飯事です。

そうした変化の中で、人間性、人間らしさのようなものが失われたように思えてしまうのも、仕方のないことなのかもしれません。

私たちが失くしてしまったと感じているものを、すべてひっくるめて町内に存在させている「夕日町三丁目」。

本来ありえないはずの「変わらない故郷」を作品の中に活き活きと描き出す

「三丁目の夕日」は、

人間本来の営みを思い出させてくれる、稀有な作品と言えるのではないでしょうか。

こちら作品の試し読みができます。

興味のある方は是非ご一読を。

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