スポンサードリンク
毎回、気になったインターネットのミーム(インターネットから広まる独特の言い回しやネタ)を取り上げ、久保田が雑感を述べるこのコーナー。
今回のテーマは「海外の反応」。
「海外の反応」を知ることの良さや、知りたいと思う気持ちがどこから来るのか、そしてそこにある意外な落とし穴…そんなことを考えていきます!
Contents
「海外の反応」を取り上げようと思った切っ掛け
「海外の反応」シリーズはネットが普及して以来、常に一定の支持を得てきたコンテンツと言えるでしょう。
実は今回、テーマを「海外の反応」にしようと思い立ったのは、私自身が意外なところで「海外の反応」を目にしたからです。
その切っ掛けとなったのは、この動画でした。
これはかつて私が大好きだったパチスロの大当たり中に流れる音楽と3Dムービー。
2007年頃の曲ですが、今でも歌詞をすべて覚えています。
久々に聞きたいなあと思って検索したところ、なんと動画が40万再生(!)もされているではありませんか。
「え?この曲こんなに人気あったの?」
意外や意外。
当時、私がこの曲の素晴らしさを友人に熱弁したところ……
「へえ……そう……(興味なし)」
と、あまりにも素っ気ない回答が返ってきたのは、何だったのでしょうか……。
「ふむふむ。やや遅すぎる感がないでもないが、ようやく世間もこの曲の良さに気が付きおったか。」
と、コメント欄を見ると、
「This is what I expect Smough to sound like」
「I finally found it oh my god」
なんと、そのほとんどが外国人の残したもの。
日本の末端コンテンツにすぎないパチスロ曲が、いったいどういう経緯があったのか、10年の時を越えて外国の人々から高い評価を得ていたのです。
「海外の反応」に求めているもの
この状況を見たときに、私は率直に「嬉しい♥」と感じました。
自分の好きなものを、他の人も好きだと言ってくれる共感のよろこび。
しかもその共感が国内では得られず、その代わりに海外の「トモダチ」が分かってくれたとなれば、特別感も加わって嬉しさもひとしおというものでしょう。
私も自分自身で経験してみて、何とも言えない喜びを味わいました。
「海外の反応まとめ」サイトに人気があるのにも、なるほど頷けるというものです。
ひとつのコンテンツによって、まったく文化の違う外国人と不思議な一体感を得られるというのは、「海外の反応まとめ」サイトならではのことではないでしょうか。
ちなみにこちらは任天堂の大乱闘スマッシュブラザーズの新キャラ追加に対する外国人の反応です。
う~ん。なんともハイテンション!まさに共感ですよね。(笑)
「海外の反応」の魅力
さらに「海外の反応」には「逆輸入」や「再発見」、「比較が可能」といった魅力もあります。
例えば……
こちらの、日体大の集団行動や
京都橘高校吹奏楽部の海外公演
久保田はこれらの動画を「海外の反応まとめ」を通じて知りましたが、もしそうしたサイトがなければずっと知ることはなかったと思います。
また、外国人による日本紹介動画などを見れば、その目の付け所の違いに驚くことでしょう。
あるいは軍事力など、他国との比較の中でしか価値を測ることのできないものに対しても、「海外の反応」による率直な意見は興味深いものとなるのではないでしょうか。
そしてインターネットに限らず、日本に来た外国人をテーマとしたテレビ番組や、政府によるクールジャパン戦略など、海外を意識するということは、今や一般に深く浸透していると言ってよいと思います。
「海外の反応」への反発
しかし、実を言うと、これまで私は「海外の反応まとめ」や海外からの評価を強く意識したメディアに対して、疑問というか、非常にネガティヴな想いを抱いていました。
「ワオ!日本の〇〇が、海外でこんなに評価されているぜ!」
ということをわざわざ知ろうとする行いの裏には、自らが所属する日本を外国人に褒めたたえてもらうことで、ちっぽけな自尊心を満たそうとしているような……そんな気持ちがあるように思えたからです。
しかし、人や物の本当の素晴らしさは「評価」によって測れるものでしょうか。
かつて「自分探し」という言葉が流行したこともありましたが、現代におけるアイデンティティの喪失というテーマは、もはやされつくした感まである議論です。
激変する社会の中で自分の輪郭を描くことができず、自分への評価に求めてしまうというのは現代の世相なのかもしれません。
実際に私が「海外の反応」に反発するにいたった背景には、私自身も偏差値や学歴や財産など、何かしらの評価を得ることで自分を際立たせようとしてきたという事実があります。
しかし「評価」は決して人そのものではありません。
それは一面的で、限定的で、風が吹けば飛ぶような本当に頼りないもの。
にもかかわらず、その評価(あるいは権威)を求めてしまうというのは、人間の弱さを浮き彫りにしているかのように思えます。
だからこそ、
「自分自身、評価に踊らされているけれども、そんな評価なんてものに左右されない良さがきっと人間にはあるはずだ」
と、思っていた私にとって、外国人の反応を特別視して、殊更ありがたがっているかのような「海外の反応まとめ」は受け入れがたかったのです。
道元禅師が戒めた「名聞利養」
道元禅師が著した『学道用心集』「發菩提心」の巻。その中で禅師は「名聞利養」を強く戒めています。
名聞利養とは、名声を求め、必要以上に財を得ようとすることです。
往古来今、或は寡聞の士を聞き。或は少見の人を見るに、多くは名利の坑に堕して永く仏道の命を失す。
名声や財産に囚われたならば、見識は浅く、視野も狭まり、生き方を見失うことでしょう。
ないものねだりは人の常なのかもしれませんが、どれだけ名誉を追っても、どれだけ財を得ようとも、その先に「本当の自分」が明らかになることは決してありません。
とは言え、評価や世間の価値観を完全に捨てきって生きるということは、多くの人にとっておよそ不可能に近いことでしょう。
お金も評価も大切なものです。
ただ、それに振り回されず、過度に囚われないという意識を持つことはできるのではないでしょうか。
常に移り変わってゆくという無常の真理を自覚しながら、本当に大切なこととは何かを心に留めて生きていきたいものです。
まとめ
さて、久しぶりにパチスロの曲が聴きたくなったんだよね~、という話から、気づけば評価や財産を求めてしまっている人間の姿に言及していました。
(→話題にひどい落差がありますね(笑))
そして「海外の反応まとめ」に対するネガティヴキャンペーンを展開したいわけでもないので、最後にフォローしておこうかと思います。
「海外の反応」シリーズには、先ほども書きましたが「逆輸入」「再発見」などの、他では得難い魅力があります。
また、外国人によるコメントを読んでみると、やけにテンションが高かったり、ジョークが効きすぎていたりと、思わずクスリと来てしまうこともしばしばあります。
たまには、日本の良さを再確認したい……なんて目的で見るのも、悪くはないでしょう。
視聴を通じて、新しい発見や予想外の驚きに出会うこともあるかもしれません。
なにか好きなコンテンツがあれば、「海外の反応」を確かめてみるのも面白いのではないでしょうか。
そして、今、ふと思ったことは……
海外から寄せられた反応を見て満足するだけでなく、海外の面白い動画を見たときには、こちらから反応を返してみるといいかもしれませんね。
一方的に受け取るだけでなく、こちらから返すことでまた新しい「海外の反応」の楽しみ方ができると思います。
それでは、これにて今回のミーム考はお開き!閉廷!