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不定期更新企画【僧侶的よろずレビュー】。
ここでは禅活-zenkatsu-メンバーが触れた本・映画・食べ物などなど、ジャンルを問わずご紹介していきます。
今回は初の映画レビューです。
お盆に合わせて見ておきたい映画「リメンバー・ミー」をご紹介します。
Contents
あらすじ
ミュージシャンを夢見るギターの天才少年ミゲル。
だが、彼の一族は代々、音楽を禁じられていた。
ある日、ミゲルは先祖たちが暮らす“死者の国”に迷い込んでしまった。
日の出までに元の世界に戻らないと、ミゲルの体は消えてしまう!
そんな彼に手を差し伸べたのは、陽気だけど孤独なガイコツ、ヘクター。
やがて二人がたどり着く、ミゲルの一族の驚くべき“秘密”とは?
すべての謎を解く鍵は、伝説の歌手が遺した名曲“リメンバー・ミー”に隠されていた…。
メキシコ版お盆「死者の日」
この物語の舞台であるメキシコには、11月1日と2日に行われる「死者の日」という風習があります。
この日はどの家庭もお墓や祭壇を飾って亡くなった人のことを語り合い、大いに笑い合うのだそうです。
露店やバンドの演奏もあるなど、その盛り上がり方は日本のお盆とは異なりますが、死者へ思いを寄せるという点で共通しています。
死との距離感
そしてこの「死者の日」と日本のお盆の一番の違いは、「死」との距離感でしょう。
皆さんはこんなカラフルなガイコツをご覧になったことはありますか?
私も雑貨屋さんなどで見たことがあったのですが、メキシコでは3000年近く前から、ガイコツを身近に飾るという風習があったそうです。
これは日本では考えられないことですよね。
現代の日本人にとってガイコツ、つまり頭蓋骨は漫画やアニメで見ることはあっても実物を見るのは火葬の時くらいのものでしょう。
しかし、メキシコではこれを身近に置くばかりか、色鮮やかに飾りつけまでしてしまうのです。
日本は歴史上、死を恐れ、嫌い、遠ざけてきた歴史があります。
だから清め塩を中心に今も根強い「風習」の数々が受け継がれています。(仏教由来ではないものも多々あります)
一方、メキシコでは、死は誰にでも訪れるもので、それを身近なものとし、死者を恐れるのではなく一緒に笑おうという受け止め方をするそうです。
死者に思いを寄せるという点は共通した風習ですが、死の受け止め方の違いがわかりますね。
リメンバー・ミーのここに注目
それでは、ここからは作中でぜひ注目していただきたい部分をご紹介します。
①お供えを受け取る死者
物語の冒頭「死者の日」に合わせて、それぞれの家の死者、つまり先祖が死者の国からお墓にやってくるシーンがあります。
お墓の下からではなく、死者の国から花びらの橋を渡ってくる死者たちは、それぞれ自分のお墓にお供えされた食べ物を嬉しそうに受け取るのです。
ただ、受け取るとはいっても実際にものが無くなるわけではなく、まるで思いを汲み取っているかのようにお供え物の魂?を持っていくのです。
お供え物が先祖に届くというところは、想像したことはあってもこうしてアニメとして見るのはとても新鮮で、お子さんに伝えるのにとても良いシーンだなと思いました。
②先祖は子孫を知っている
主人公のミゲルは、あるきっかけで「生きたまま」死者の国に行くことになります。
そこでは、ひいひいおばあちゃんをはじめ、自分が会ったことのない「先祖」と対面するのです。
そこで面白いのは、先祖は誰もがミゲルを知っていて、すぐに力になってくれることです。
「あなたが子孫なのかい!?」
という驚きもなく、いつも見ていたかのように自然とミゲルを認識するのです。
そう、「リメンバー・ミー」ではご先祖はいつも死者の国から私たちを見てくれている存在なのです
僧侶になって、こちらから先祖を思うということは考えても、先祖が私たち子孫を名前まで知っているという風には考えたことがなかったので新鮮でした。
③3度目の死
作中では、亡くなった人は死者の国で楽しく暮らしています。
しかし、そんな死者の国には、さらにもう一度死が訪れることがあるのです。
それは「忘れられてしまうこと」。
その人を覚えている人が誰もいなくなった時、その人は死者の国からも消え、完全に消滅してしまうのです。
これは人間の3度目の死を描いているとても印象的なシーンです。
「シネマトゥデイ」のインタビューの中で、リー・アンクリッチ監督はこのシーンについてこう語っています。
「“最終的な死”という考え方が、覚えておくことがいかに重要かという、『死者の日』という祝祭の核の部分に行き着くことになる。
だから『リメンバー・ミー』(わたしを覚えていて)という劇中で何度も歌われる歌があり、映画のタイトルもそうなんだ。愛する人々のことを覚えておくことは、とても重要だ」
死が人を終わらせるのではなく、人が忘れた時に人は終わるということを教えてくれる、とても大切なシーンでした。
お盆にみんなで観て欲しい映画
仏教では、人の肉体にではなく教えに思いを寄せることを大切にします。
その人が残してくれた言葉や生き様という教えの一つ一つを形見としていくことが、何よりの供養なのです。
お盆とは、そんな故人や先祖の教えに改めて思いを寄せ、自らを省みる行事です。
「リメンバー・ミー」は、私たち僧侶が言葉でしか伝えてこれなかったお盆の精神性の部分を、世界最高峰のアニメーション技術で映像化した作品だと思います。
もちろん、宗教的・文化的な違いがあるので、これが仏教そのものだとは言いません。
ただ、死との「付き合い方」、そして先祖から受け継いだ自分の命を見つめる上で、この作品は非常に重要な意味を持ちます。
死を考えることは命を考えることであり、死との向き合い方を考えることは、生き方を考えることでもあります。
お盆を迎えるにあたって、ご家族揃って「リメンバー・ミー」をご覧になってみてはいかがでしょうか?
☆こんな人にオススメ☆
・お盆に親戚で集まる人
・お子さんのいる方
・お盆の精神性をわかりやすく感じたい方
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