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7月には東京・神奈川・他一部地域で、8月には各地で迎えるお盆。
ホームセンターやスーパーではお盆セットが販売され、その準備をされている方も多いはず。
お仏壇の準備に関しては過去にこちらの記事でご紹介していますのでぜひご覧ください!
そして今回は、世間的にはもちろん、僧侶側にも意外と知られていない&わからないアレコレをご紹介します。
Contents
①由来編
「盂蘭盆」の意味の最新事情
お盆、正式には盂蘭盆会の意味と由来は、ここまで全5回の記事でお話しさせていただきました。
この記事の中では触れませんでしたが、そもそも「盂蘭盆会」という名前にはどのような意味があるのでしょうか?
「会」というのは仏教の儀式である法要のことで、「成道会」や「施餓鬼会」などにも使われますね。
そこで厄介なのが「盂蘭盆」という言葉。
今私たちが日本で使っている仏教の言葉の成立には2つのパターンがあります。
一つはインドの言葉を中国語に意訳してから漢字にしたもの。
例えば「ドゥッカ(思い通りにならない)」という言葉は中国語に意訳されて「苦」という言葉になりました。
一方で意訳はせずにインドの言葉の音に漢字を当てはめただけの言葉があります。
例えば「ストゥーパ(仏塔)」という言葉は意訳をせずに「卒塔婆」という漢字が当てられ、これが今のお塔婆にあたります。
「盂蘭盆」というのはこの後者で、インドの言葉に漢字をそのまま当てた言葉な訳です。
そのインドの言葉というのが、これまでは「ウランバナ」という言葉が有力とされてきました.
その意味はというと「逆さ吊りの苦しみ」。
これは「仏説盂蘭盆経」に登場する目連尊者のお母様の苦しみを表現している言葉だと言われてきました。
しかし、冷静に「仏説盂蘭盆経」を読んで見ると、逆さ吊りなんて一切書いていません。
餓鬼道に堕ちてしまったお母様がは飢えに苦しんでいるのであって、逆さまに吊るされて困っているわけではないのです。
仮に逆さ吊りになって苦しんでいるのだとしたら、そこに食べ物を持って行こうとする目連尊者って一体…(笑)
つまりは、この「ウランバナ」という言葉は語源としては少し無理のあったのです。
(「○コちゃんに叱られる」ではウランバナ説をとってましたね)
そこで新たな説として有力になったのが「オーダナ」という言葉。
これは食べ物を供える為のいわゆる「お盆」のことで、「仏説盂蘭盆経」の描写とも一致します。
あくまでも「有力」というだけなのですが、「盂蘭盆」という言葉の意味はお供えをするお盆の方が自然かなと、私は考えています。
詳しくはこちらの記事をご覧下さい。
施餓鬼会は別の行事
また、お盆には各寺院で「施餓鬼会(施食会)」を行うケースが多くあります。
実はこの施餓鬼会は、「佛説救抜焔口餓鬼陀羅尼経」という、またお経に由来のある、別の行事です。
ただ「仏説盂蘭盆経」と共通して餓鬼への供養をテーマにしているため、よく混同されてきました。
そこで混同したまま説明をしてしまうと、あたかも「餓鬼になったご先祖に食べ物を供養します」という大変なものになってしまうのです。
盂蘭盆会も施餓鬼会も、あくまでも「仏教の元に正しい生き方をすることが供養になる」というところが大切です。
合わせて行うことには問題はありませんが、僧侶側はしっかり理解しておきたいですね!
②お参り編
そして、お盆といえば迷いやすいのがお寺やお墓、お仏壇へのお参りのことです。
実はこのお盆のお参り、地域性がありすぎてとても一つの正解を出すことはできません。
ただ、いくつか基本的な作法の範囲でご紹介したいと思います。
お線香の本数
時々聞かれることがあるのはお仏壇にあげるお線香の本数。
「おばあちゃんは2本あげてた」「いや3本だった気が」「1本でしょ」おぼろげな記憶と、家族から教わった形とが混ざって結局正解がわからなくなってしまいます。
地域性があるかもしれませんが、お盆にはお仏壇や精霊棚の脇に、小さくお水と食べ物と香炉が用意されている場合があります。
これは自分の先祖以外の、ご縁のなかった方々へのお供えです。
そこにも当然1本お線香を供えるべきです。
そう考えると、結局本数の正解なんて一概には言えないのです。
ただ、大切なことは、誰にどんな思いでそのお線香を差し上げるのか、ということ。
ご先祖様に1本、お仏壇の仏像である仏様に1本。
今年初めてお盆を迎えられる方がいらっしゃるならその方にも1本。
そうしてご縁のあった方やそのご家庭のお先祖様など、お線香を差し上げる方を具体的に思い浮かべて1本ずつお供えしてもいいですし、香炉が小さいようであれば、後の方のことを考えて、1本に全ての思いを込めてお供えしてもいいでしょう。
お線香を「何本あげるか」ではなく「どのように差し上げるか」が重要だと考えていただければと思います。
お金を包む場合
また、お参りに行ったり、棚経を迎える場合に、お金を包む場合があるかと思います。
これも地域性があるかもしれませんが、以下のように書いてお渡しするのがいいでしょう。
ご家庭のお仏壇…「御佛前」
棚経に来たお坊さん…「御布施」
お寺へお盆の挨拶…「盆句」(※地域によって違いアリ)
また、初盆(新盆)は、亡くなって四十九日が過ぎてから、初めてお盆を迎える方の場合です。
仮に昨年のお盆の時点で四十九日が経っていなかった場合には今年が初盆(新盆)となります。
③その他
地域によってお盆の風習は本当に様々です。
迎え火・送り火を焚く地域もあれば、私の地元のようにお寺で提灯の火をつけてお墓にお迎えに行く地域もあります。
ちなみ、提灯の火は車の中では消していいので、くれぐれも事故などのないようにお参りください。
他にも、お墓で出たゴミは持ち帰っちゃいけないという噂を聞くことがありますが、お寺でお焚き上げするのは古くなったお塔婆や白木の位牌など、仏具のみの場合が多いです。
お寺によってはゴミ箱を設置しているかもしれませんが、くれぐれもお盆の準備のために不法投棄をしたり、分別せずに出したりしないようにしてくださいね!
以前の記事で申し上げた通り、お盆は自らの生き方なくしてご先祖様の供養はできません。
お盆のために身勝手になったり、人に迷惑をかけたりしては本末転倒ですので、ご注意ください。
そしてお盆休みの開放感でハメを外しすぎるのも禁物です。
(私はお盆の最終日に調子に乗って大怪我をしました。)
日本の文化と混ざる中で色々な形が生まれたお盆なだけに、わからないことや迷うことなどがあるかとは思いますが、まずはお盆という行事の精神性を大切に、有意義な期間になりますこと心から願っております。