日本の僧侶とダース・ベイダー

スポンサードリンク

 

遠い昔、遥か彼方の銀河系で…。

 

お正月の忙しさが落ち着いた頃、同じく曹洞宗の僧侶であり従兄弟と「スターウォーズを観に行こう!」ということになり、レイトショーで最新にして最終作「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」を観てきました。

これからご覧になる方もいらっしゃると思うのでストーリーはさておき、「ああ、これで本当に終わりかあ…。」という感慨深さの方が先立ってしまいました。

思えば、その従兄弟からスターウォーズの存在を教わったのがエピソード1が上映された1999年、小学3年生の頃。

そしてエピソード3で完結したのが中学生の頃だった為、スターウォーズから受けた影響は少なくありません。(ライトセーバー持ってた)

そこで今回、最終作を観るにあたって、過去の作品のおさらいをしていると、ふとあることを思ったのです。

それは「ダースベイダーって日本の僧侶と似ているんじゃないか」ということ。

新年早々マニアックな内容ですが、今回はそんなスターウォーズに関する記事をお届けしたいと思います。

Contents

ダースベイダーとは?

ダースベイダー。

このキャラクターには皆さんが何かしらの形で触れてことがあるのではないでしょうか。

ダース・ベイダー

映画「スターウォーズ(以下SW)」の敵のボスであり、絶大な人気を誇るキャラクターです。

彼のテーマソングである「帝国のマーチ」は、その昔永平寺でお経の節回しの練習にも使われたというのだから驚きです。

ダースベイダーの正体

SWのシリーズ1〜3作目の宿敵として登場するダースベイダーは、実は主人公ルーク・スカイウォーカーの父、アナキン・スカイウォーカーであることが、2作目「帝国の逆襲」で明らかになります。

ルーク・スカイウォーカー

本来正義の立場にあったはずのアナキンが、なぜ悪に堕ちてダースベイダーとなってしまったのか、そんな彼の過去が描かれるのがシリーズ4〜6作目であるエピソードI〜IIIです。

つまり、SWは1〜3作目までは息子であるルーク4〜6作目は父であるアナキン主人公に置いたスカイウォーカーという一族のストーリーで、ダースベイダーはシリーズの中核を担う登場人物と言えます。

アナキン・スカイウォーカー

アナキンはなぜダースベイダーになったのか

アナキンは、幼少期から機械に強く、その能力の高さはジャンク品からC3-POを作ってしまうほど

C3-PO

さらに、フォースと呼ばれる、SWの世界におけるある種の「力」を人並み外れて秘めた銀河にバランスをもたらすと予言された、選ばれし子だったのです。

幼少期のアナキン

そして、アナキンを巡って正義の「ジェダイ」と悪の「シス」がそれぞれ自らの方に導こうとします。

アナキン自身は正義の「ジェダイ」でいることに大義や使命を感じ、悪を討つことに迷いはありませんでした。

しかし、彼のある性格がその命運を分けます。

それは彼の愛情深さです。

友の為、親の為、そして恋人の為と、愛する人の為に感情的になり、様々な場面で彼は喜怒哀楽をあらわにします。

ジェダイの長老であるヨーダは、そんな彼の感情の起伏の激しさを危惧していました。

ヨーダ

怒りや悲しみから復讐に走れば、大きな力はいつでも悪にひっくり返ってしまうからです。

そうした点からジェダイは恋愛感情を抱くことなどを戒めていましたがアナキンは内密に結婚までしてしまいます

そして、その妻への愛情故に、アナキンはヨーダが危惧した通り、悪の道であるシスに堕ち、ダースベイダーとなってしまうのです。

日本の僧侶と結婚

ここで少し話が変わり、日本の僧侶が置かれた状況について考えてみます。

インドから最長距離を経て仏教が伝わった国である日本の僧侶は、他のアジア圏の仏教徒と比べてかなり特殊な点があります。

それは、結婚をするということ

実際に永平寺にいる時、韓国の仏教徒の団体様をご案内していると「何で日本のお坊さんは結婚するんですか?」と聞かれたことがあります。

海外の仏教徒に限らず、日本人でも初対面の方には「お肉食べていいんですか?」「お酒飲んでいいんですか?」とならんで「結婚できるんですか?」と聞かれることもあります。

確かに、僧侶で結婚するのは日本くらいのものですが、これは浄土真宗以外では明治時代以降のことです。

奈良時代、日本の僧侶は朝廷のからの規則(律令)よって肉食や結婚が禁止されました

それは僧侶が神聖な存在として国を護るべき存在だったからです。

その規則が、朝廷が実質の力を失った期間にも失効されずに江戸時代まで残っていて、力を取り戻した明治時代に改めて取り消されます。

この時、政府から「僧侶は肉食や結婚を勝手にしていい」という国からのお達しがあり、仏教界は大きく揺れ動きます。

それからしばらくは、曹洞宗の中でも結婚はしないでおこうという動きがあったようですが、徐々に結婚を肯定するようになっていくのです。

結婚はダークサイド?

こうした経緯があったとはいえ、アジア圏の僧侶がヨーダだとすれば、一般人と変わらない生活を送る私たち日本人は堕落したアナキン、つまりダースベイダーに見えるかもしれません。

結婚には、確かに仏教徒にとってデメリットが含まれます。

愛情から生まれる執着や怒り、嫉妬や悲しみや充足感は、お釈迦様が説かれた生き方を妨げる場合があるからです。

しかし、ここで思い出したいのは、ダースベイダーが正義の心を取り戻したきっかけです。

悪に堕ちたはずのダースベイダーは、息子であるルークが苦しんでいる様子を見て、その愛情故に正義の心を取り戻し、黒幕である皇帝を倒し、銀河にバランスをもたらすのです。

アナキン・スカイウォーカーは、愛情によって過ちを犯し、愛情によって正しさを取り戻すことができました

つまり愛情とどのように向き合うかが、正義と悪の分かれ目となったのです。

アナキンになるかダースベイダーになるか

そう考えると

・愛情は人を惑わせるから持つなというヨーダ

・愛情によって迷い、愛情によって正しい選択をしたアナキン

この二人の生き方はの違いは、アジア圏の僧侶と日本の僧侶の違いと似ているような気がします。

確かに、僧侶という生き方を妨げる可能性がある愛情を持たない、結婚をしないというヨーダの生き方は手堅く、仏教徒として浄らかな道になるでしょう。

しかし、愛情に悩み苦しみ、そして喜びや幸せを知ったアナキンだからこそ言えることもたくさんあるはずです。

社会に身を置き、僧侶らしからぬイマドキな悩み苦しみを抱えて、その中でも正しくあろうとするからこそ、人の痛みや苦しみを理解できる部分もあるのではないでしょうか。

曹洞宗には願生此娑婆国土がんしょうししゃばこくどという言葉が伝わっています。

それは、お釈迦様はあえてこんなに苦しみだらけのこの世界にお生まれになった、そしてそれは私たちも同様であるという意味です。

悩みや苦しみに触れないことで歩む正しい道もあれば、悩み苦しみを抱えるからこそ歩める正しい道もあるのです。

それは社会で生きながら、悩むことをやめて感情や欲に身を任せてしまえば、あっという間にダースベイダーになってしまう恐ろしい道です。

日本の僧侶、いや、私自身が、社会生活の中でアナキンになるかダースベイダーになるか、その生き方が問われているのだと思います。



 

この記事が気に入ったら
フォローしよう

最新情報をお届けします

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事