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2020年12月31日。
世界にとっても大きな転機となったこの年の大晦日は、格闘技ファンにとって特別な日でした。
かつてPRIDEやK-1が放送された紅白歌合戦と同じこの時間帯で「RIZIN26」が放送されました。
今回はレスリングでオリンピックメダリストの太田忍選手の出場や朝倉未来選手の再起をかけた試合など、楽しみなコンテンツが盛り沢山で、非常に注目度の高い大会でした。
その中でも日本中、いや世界中が注目していた試合がRIZINバンタム級タイトルマッチ「朝倉海vs堀口恭司」です。
今回はそんな歴史的一戦の興奮冷めやらぬ中、少し話題となった出来事について考えます。
Contents
朝倉vs堀口の因縁
この試合の因縁は2019年に遡ります。
当時RIZIN(総合ルール)で負け無し、バンタム級チャンピオンであった堀口恭司選手から、若手である朝倉海選手が1R1分弱で衝撃のKO勝利を収めました。
ただしこの試合はベルトをかけたものではなかったので、その後すぐタイトルマッチとして再戦が決定。
ところがこの試合を前に堀口選手が右膝前十字靭帯断裂と半月板損傷という大怪我を負い、試合が流れます。
それから堀口選手は手術&リハビリ、朝倉選手は実力者たちを次々と破りながらキャリアを積むという日々が流れました。
怪我によって堀口選手が返上したベルトは、その期間に朝倉選手が奪取しチャンピオンの座につきました。
そして昨年末、ついに堀口選手がリハビリを終えた復帰試合として、皮肉にも「王者朝倉vs挑戦者堀口」という、立場の逆転した形でのタイトルマッチが、大晦日に組まれたのです。
※最初の対戦
震えた大晦日
堀口選手は現在アメリカのチームに所属していますが、元々は矢地選手と同じ山本KID徳郁選手のジムの出身。
さらに、そのバックボーンである空手の道場は私の地元で、普段セコンドにつく二瓶さんは同じ中学の一つ上の先輩!
ということで私は非常に勝手ながら、応援せざるをえない!くらいの気持ちを抱くようになったわけですが、理由は親近感だけではありません。
こんな時代だからこそ、怪我というアクシデントを乗り越えた人が今一度リングで勝つところをみたい。
という気持ちがありました。
もう少し正直な気持ちをいえば、非常に順調に事が進んでいる私より2歳も若い選手が、そんな困難を乗り越えた人を打ち砕くところが見たくなかったのかもしれません。
絶大な人気を誇る両選手によるこの試合は、下馬評が割れたことはもちろん、どちらにも勝ってほしい、というようなコメントが溢れました。
私も非常に似た気持ちになりながら、心のどこかでは「どんなに困難を乗り越えたって報われるとは限らないんだよな」という、諦めに似た感情を抱いていました。
除夜の鐘の前に
そして、私は除夜の鐘のお手伝いに行く準備を済ませて、テレビと向き合います。
そういえば、まだ結果のわかっていないものをリアルタイムで観るのは久しぶりのことでした。
結果を聞いて、後から公式がYoutubeに公開したものを観る、というのが当たり前になっていて、なんだかとてもソワソワしました。
そしてゴングが終わると、恐ろしいほど早く、圧倒的に試合は決まりました。
ローキックによってダメージを与えた堀口選手が、ノーダメージで勝利を収めたのです。
3分にも満たないわずかな時間で、堀口選手はベルトを取り戻してしまいました。
震えるほどの驚きと感動を、2020年の最後にもらいました。
(引用元:RIZINオフィシャル)
「Yes!Easy fight!」騒動
これまでの復帰への道のりを思ってか、勝利への歓喜に叫ぶ堀口選手。
その様子は、勝って当然の頃より一段と嬉しそうに見えました。
ところがその場面が原因でちょっとした騒動が起こります。
堀口選手がセコンドについた名コーチ、マイク・ブラウンさんの元へ駆け寄ると、
「Yes! Easy Fight!!」と叫びました。
この様子がちょうど放送されると、SNSなどで批判が殺到してしまったのです。
スラングの難しさ
この時堀口選手が口にした「Easy fight!」という言葉は、普段生活しているアメリカでのスラング(というより慣用句に近いかも)で、「怪我したけどちゃんと勝てたよ!」という程度の意味だったそうです。
私も放送をみながら「やったぜ!!!」くらいのニュアンスで受け取っていたのですが、特に朝倉選手を応援していた方にとっては朝倉選手を冒涜したように聞こえたようです。
考えてみると、普段触れているヒップヒップの世界では褒め言葉として「Shit!」とか「F**k!」とかを使うケースがあって、日本の英語の授業で習う意味とは異なる場合が多々あります。
スラングとか熟語とか慣用句みたいなものは、知らないと真逆の意味に捉えてしまうことも多いので、非常に難しいと思います。
では、今回堀口選手を批判した人は「知らなかったんだからしょうがない」で済むかというと、そうではないような気がします。
世の中で知ってるなんてごく一部
これは以前S-Laboというメディアで「日本人はThis is Japanが言えるのか」という記事にも書いたのですが、日本語で、「とことん、最後の最後まで」というような意味で使われる「徹底」という言葉があります。
実はこれは元々仏教のこんな説話から生まれた言葉なんです。
ある川を渡ろうとする兎と馬と象がいました。
兎は水面をスイスイ泳いで対岸へ渡ります。
次に馬は水を蹴りながら水中を進んで渡りました。
最後の象はドシンドシンと川底を踏みしめながら渡っていきました。
川の水面を泳いで渡るウサギと、水かきのように泳ぐ馬、そして川底を踏みしめる象。
同じく川を渡っているけど、その渡り方は大きくことなります。
私たちにはそれぞれ、川底まで踏みしめた象になれる分野もあれば、水面しか知らない兎になる分野もあります。
兎になることは悪いことではなく、仕方のないことです。
ただし、それを自覚せずに簡単に感情に振り回されて人を批判したり傷つけてしまうことは、仏教で言えば完全に煩悩の世界です。
特に人を批判する場合などには、自分が知らない背景や「川底」があるのではないか、と考えてみることは、現代において非常に大切なことではないでしょうか。
(引用元:RIZINオフィシャル)
まとめ
人は過ちを犯す生き物です。
それが過ちであれば正されるべきですが、正す側もそこに責任がなくてはいけません。
まずは誰もが、自分の知識や見識は限られたものである、絶対ではないという自覚をもつことが、今回のような大きな感動に水を差すような騒動を減らすことにつながるのかもしれませんね!
まずは堀口・朝倉両選手、感動をありがとうございました!!
(引用元:RIZINオフィシャル)