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最近、日本の文化や価値観が海外で評価されているという話をよく目にするようになりました。
海外で通用する日本語と言えば、「カラオケ」「寿司」などが思い浮かびますが、
「もったいない」や「おもてなし」などの言葉も世界的に知られるようになったと聞きます。
そして「改善」という言葉も浸透しているそうです。
現状をより良い方向に変えていく「改善」というアプローチは、私たちにとってなじみ深く、
また「改善」が世界的に受け入れられていることは、裏を返せば、今の状況を変えなければならないということでもあるように思います。
もちろん「改善」して前に進んでいくということは悪いことではないでしょう。
一方で、私は現在の「改善」というアプローチに対して一抹の不安を覚えています。
そこで今回は、なぜ私が「改善」に不安を感じるのかということを書いていきます。
Contents
「改善」のモチベーション
「改善」に不安を覚える理由の一つには、
ここ最近の社会の急激な変化に伴う、「改善」のスピード感の上昇があります。
本来「改善」というものはもっと漸進的なものであったのではないでしょうか。
いまの「改善」は、どうも「改革」や「革新」に近い様相を呈しているように思います。
当然のことながら私たちが生きる現代社会には、様々な問題があります。
コロナの脅威、貧富の格差、過疎高齢化、環境問題など、数えれば枚挙にいとまがありません。
こうした諸問題には迅速な対応が確かに必要で、
また競争が前提の社会において、他者に先んじるということは、優位に立つための基本的な条件のひとつでもあります。
「改善」に「改善」を重ねて様々な変化に対応し、また競争力を得ていくということは重要なことと言えるでしょう。
しかし、近年はその要求レベルがあまりにも上がりすぎていないでしょうか?
急激な変化というものは、しばしば大きな歪みを伴うものでもあります。
変化についていけない人も生まれるでしょうし、また行き過ぎた「改善」自体がこれまで社会を支えてきた様々なシステムや価値観を壊してしまわないか、と不安に感じるのです。
行き過ぎる「改善」
また「改善」という言葉には「より良くする」という意味が含まれます。
私が思うのは、そのために、
「やめる」
「とめる」
といったアプローチが見過ごされがちになってはいないかということです。
たとえば、
工業製品の悪い部分を取り除いたり、
お昼休みに昼寝をしたり、
それだけで本来は「改善」と言えるはずです。
しかし、いまの「改善」には、さらなる上積みを目指すというニュアンスが含まれているように感じます。
悪い部分を取り除いたならば、そこに新たな機能を持つデバイスを付け加えてみたり、
お昼休みにも仕事をしたり、など。
それは有効に機能することもあるでしょうが、
付け加えたデバイスが不必要なものであったとか、
昼休みまで働くことでかえって能率が落ちてしまったりであるとか、
これでは「改善」が「改悪」にもつながりかねないものになってしまいます。
「改善」に向かうモチベーションの問題
さらに「改善」へと向かう動機には、しばしば、
現状が悪である。
今の姿が理想の姿ではないから、変えなければならない。
とする価値判断が伴います。
こうありたいと願うこと、そこに向かっていこうとすること。
これは人間ひとりひとりの自己実現にもかかわる発想です。
現状にプラスしていくという発想、それ自体に問題があるとは言いません。
しかし、現状がマイナスであるという認識は、本来必要のない「余計」ではないでしょうか。
現状がマイナスであるという認識も、「改善」がうまくいっているうちはいいかもしれません。
しかしこの「余計」があることで、「改善」できなければ、悪い自分のままでいるということになってしまいます。
たとえば、
「ダイエットに失敗した自分はダメな奴だ」と感じたり、
「仕事が遅い自分は役立たずだ」と思い込む。
といった具合です。
これらの場合、事実は「自分はダイエットに失敗した」という部分と、「自分は仕事が遅い」という部分だけであり、
「自分はダメな奴だ」「役立たずだ」は完全な「余計」です。
そもそも「改善」にだって失敗はつきものです。
「自分はダメだから」「役立たずだから」と現状をマイナスに感じてしまう「余計」は、次なるチャレンジの大きな障害になってしまうのではないでしょうか。
いま必要な「あらためる」とは
こうした状況を鑑みると、
いま、「改善」のそれとは、少し違った「あらためる」が必要になってきているのではないかと思えます。
それは「改める」ではなく「検める」ということ。
脚下照顧。
理想を追求したり、なにかしらの変化を起こそうと試みる前に、
まず自分のこと、周りの状況を一度立ち止まってよくよく見渡してみる。確かめてみる。調べてみる。
こうしたアプローチが必要なのではないでしょうか。