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11月28日水曜日に、秋葉原のこまきしょくどうさんにて毎月恒例の食作法ワークショップ「ほっと晩ごはん」を開催しました!
今月は一足早いですが仏教行事の一つ、「成道会」にちなんだ回でした。
成道会とは?それと食がどう関係するのか?
今日はクリスマスの影に隠れた宗教行事、成道会にちなんだ食作法イベントのレポートです。
Contents
成道会とは?
およそ2500年前、お釈迦様は生への執着を離れるため、苦行に身を投じました。
その苦行の一つが厳しい断食でした。
しかし極限の空腹状態の中で一瞬の安らぎを得たのも束の間、一度食べ物を口にすれば食欲は戻ってきてしまいます。
三大欲求というのは一度絶ったとしても、次の瞬間には湧いてくるものです。
それをどれだけ我慢しても本当のさとりには至らないと感じたお釈迦様は川で沐浴をして体を清め、スジャータという村の娘から乳粥の供養を受けます。
そうして体力を回復し、菩提樹の下での坐禅によってお覚りを開かれました。
それが十二月八日であったことから、この日は世界中の仏教徒がお釈迦様のお覚りを讃える「仏成道」の日となりました。
(イベント配布資料より)
成道と坐禅とお粥
私たち曹洞宗の僧侶は、お釈迦様が坐禅と調った生活の中でおさとりになったことから、坐禅と生活の中の作法を重視しています。
特に修行中は、一日が坐禅で始まり、坐禅で終わる生活です。
その中でも12月1日〜12月8日の※臘八摂心の一週間は朝はやいところで3時半から夜9時まで、一日中坐禅をします。
もちろん辛いです(笑)足首に古傷がある私は初日が終わった時点で足取れると思いました。
しかし、永平寺に修行に行くまでほとんど坐禅をせず、門を叩いてから一年経っても坐禅に慣れない私にとっては、坐禅と向き合う良い機会になりました。
そして7日間の坐禅をなんとか乗り越え、ようやく迎えた8日の朝。
私が修行した永平寺では、お釈迦様がおさとりを開いて4時間ほど経った6時頃、朝食を迎えます。
そこで登場するのが、何を隠そう、今回の献立の主役である豆乳粥なのです!!
体の痛みや眠気などで疲れたところに運ばれる、豆乳とお米が混ざった甘い香り。
まずはそのまま口に入れればその優しさが染み渡ります。そして次に白ごまのごま塩をかけて食べると…。
なんともいえないハーモニーです。
永平寺で修行した僧侶ならきっと感動した方もたくさんいらっしゃるはずです。
そして、この感動をぜひ皆さまと共有したい!と思い、今回の内容になったわけです。
※臘八=臘月(12月)の八日
摂心=集中坐禅期間のこと
当日の様子
今回も参加者の皆様には簡単な調理や盛り付けなどをお願いし、全員で食卓の準備をします。
そして今回は僧侶が使う食器「応量器(おうりょうき)」の略式のものを使っての食事です。
普段とは作法が違うので大変なところもありますが、丁寧に食事をいただくための作法がたくさん詰まっています。
そして今回からは新メンバーの久保田も参加して一緒に食事をいただきました。
献立は以下の通り。
・豆乳粥
・ごま塩
・里芋の柚子煮
・菜っ葉の海苔和え
・揚げだし胡麻豆腐
・大根とかぶのぬか漬け
新鮮だったのは、あずきご飯を使った豆乳粥です。
今までは白米でしかやったことがなかったので、あずきの風味が加わってさらに美味しくなっていました!
皆さまも作法を実践しながら、食事と向き合っていただけたようでした。
「食べること」と「成道」
さて、作法に則って食事を終えた後は、お茶を飲みながら簡単なお話。
今回は私の実家で採れた柚子を使った柚子茶を召し上がっていただきました。
さらに参加者様のご実家で採れたみかんの差し入れを頂戴し、みんなでこたつに入っているような感覚で「食べること」と「成道」のお話をさせていただきました。
食事をする際のお唱えごとの一つに「五観の偈」があります。
ここには食事をいただく上で心がけること、顧みるべきことが五つあります。
その最後、五つ目はこう締めくくられます。
「五つには成道(じょうどう)の為の故に、今この食(じき)を受く」
「成道」とはおさとりを開いた、仏道を成したという意味がありますが、この「道」は何も仏道に限ったことではありません。
道とは生き方や人生のことです。
ですから仕事でも家事でも趣味でも、その瞬間を丁寧に、向き合いながら生きていくことで誰もが「成道」することができるのです。
そして食事とは野菜であろうが、穀物であろうが肉であろうが、命をいただくということ。
「成道の為の故に、今この食を受く」とは、自分の人生という道を成すために食事を食べ、いただいた命を生かしていくんだ、という誓いなのです。