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これは私、深澤亮道が福井から岩手までの700Kmを無一文で歩いて帰った物語である。
Contents
前回までのあらすじ
6日目
北陸道最大の難所「親不知・子不知」に差し掛かった深澤亮道。
身の危険を感じ、本音を言うと電車に乗ろうとしていたところ、なんと草刈民代似の女性が「車に乗りませんか?」と話しかけてきました。
そのお言葉に甘え、颯爽と車に乗り込み、最大の難所を乗り切ることができました。
前回の記事はこちら。↓
バックナンバーは以下から読むことができます。↓
今回は、新潟県糸井川市「須沢臨海公園」から、「道の駅 マリンドリーム能生」を目指します。
浜風、夜の顔
6日目 18:00〜
当初の予定としては、6日目は「親不知ピアパーク」と呼ばれる、親不知・子不知海岸の中程にある道の駅に野宿するつもりでした。
しかし、草刈さんが「あそこはまだ道が危ない場所だから」と、親不知・子不知海岸を超えた「須沢臨海公園」と呼ばれる場所まで送ってくれました。
そして、初秋のうっすら色づき始めた樹々を眺めながら、ゆっくり露天風呂に浸かり、さらには夕食にとんかつまでご馳走になりました。
野宿では有りますが、心もお腹も満たされた状態で、その日は眠りにつくことができました。
と、思っていたのも束の間!
眠ってから数時間後にまた目を覚ますのでした。
私の眠りを妨げたもの・・・
それは・・・
そう!風です!
私が野宿していた場所は「須沢臨海公園」。
つまり、目と鼻の先が海です。
到着した時にはあまり気づかなかったものの、寝ていると物凄い浜風を受けることになります。
骨組みがない簡易テント「ツェルト」を使用しているため、風に煽られたテントの生地が、私の頬に容赦なく襲い掛かります。
それが、夜通し続くわけです。
5年近く修行道場で集団生活をしていたので、多少の睡眠時の生理現象には抵抗力がついていたと自負しておりました。
余談ではありますが、修行僧が坐禅を行う場所を坐禅堂、または僧堂と呼びます。
そこでは坐禅だけではなく、一人一畳のスペースで食事も行い、また就寝もこの場所で行います。
僧堂は三黙道場と呼ばれる、言葉を発せず黙々と修行に取り組む場所に定められています。
ですので、昼の僧堂はとても静かな空間となっております。
しかし、夜の僧堂はうって変わって、修行僧による大合唱。
それは何かと言いますと、いびき・歯ぎしり・寝言・奇声・徘徊がそれに含まれます。
流石に、生理現象を戒めることはできません。
修行中、私はそんな中でも何も動ずることがなく睡眠を取ることができていました。
それでも、さすがに物理的な攻撃には敵いませんでした。
自然のあるがままの姿に、苦しめられた一晩を過ごし、寝不足のまま朝を迎えたのでした。
マリンドーム能生
7日目 6:00〜
寝不足と言えども、外で寝ているとお天道さんが昇れば自ずと目が覚めるものです。
まさしくこれが、自然の摂理に従って生活をするということでしょう。
もし、夜型生活が続いているなと思う人は、一度野宿をしてみて下さい。
おそらく、体が自然のサイクルに合わせて動くため、生活リズムが回復すると思います。
さて、本日目指すは「道の駅 マリンドリーム能生」までのおおよそ20kmの道のりです。
本日の天気も快晴。
8時頃に「須沢臨海公園」を出発し、日本海に沿うように通る、国道8号線をひた歩きます。
浜風、昼の顔
7日目 8:00〜
「嗚呼、なんて気持ちがいいんだろう・・・」
心の中でとても心配になっていた「親不知・子不知海岸」を無事抜け、ここからは道に迷う心配もない、そして気温もちょうどいい。
快晴の空の下、穏やかな波の日本海を眺めながら、ただただ歩きます。
夜にあれだけ苦しめられ、攻撃されたと感じた浜風が、昼になると打って変わって、自分を優しく包み込んでくれ、応援してくれている感覚を覚えます。
夜も昼も同じ日本海から吹き付ける浜風です。
それを良い風、悪い風と判断してしまう人間の感覚とはとても不思議なものです。
この時の感覚は、まさしく絵本『モチモチの木』で、家の前にあるトチの木(モチモチの木)を昼間は全く怖がらないのに、夜になるとその木が怖くて二人暮らしをしているおじいちゃんを起こさないと、トイレにいけない主人公・豆太と同じ感覚だったと思います。
私も昔は、実家の廊下が夜になると大変怖くなり、トイレに行けなかったことがあります。
恐らく、お寺ということも関係していたのでしょう。
そんな経験から、おじいちゃんを助けるために、夜中にモチモチの木の前を通りお医者さんを呼びに行った豆太にとても勇気をもらったのを覚えています。
私が好きだった絵本ベスト3に、確実にランクインする『モチモチの木』。
まだ読んだことがないという人は是非ご一読下さい!
久比岐自転車道
7日目 11:00〜
「須沢臨海公園」を出発してから3時間ほど、景色を楽しみながらトボトボと歩いてきました。
私の目の前に現れたのは・・・
「久比岐自転車道」です!
久比岐自転車道は、旧北陸本線、かつてSLが走っていた線路跡地を利用して作られました。
糸井川市から、上越市までの全長32kmの大規模サイクリングロードです。
元々は線路跡地なので、トンネルや橋は当時使用していたレンガがそのまま残されている場所もあるそうです。
(以下、心の声)
「いや、こんないい天気なんだから、普通にサイクリングしたい!
絶対気持ちがいいに決まってる!
歩くとか、考えられない!」
と、いう元も子もない葛藤に苛まれつつ、それでも車に轢かれる心配なく歩けるのはとても喜ばしいことです。
今になって考えてみると、歩いていると本当に葛藤の連続だったと思います。
たまに通るライダー達の10分の1ほどのスピードで、ゆっくりと進みます。
道の駅 マリンドリーム能生
7日目 16:00〜
休憩を挟みながら、ゆっくり歩いてきましたが午後4時には、目的地である「道の駅 マリンドリーム能生」に到着しました。
いや、むしろこれまでの1日の距離が長すぎたのもあり、もしかしたらこのくらい(20km)がちょうどいいのかもしれません。
時間を持て余してる私は、托鉢衣という異様な格好にも関わらず、道の駅内を散策します。
さぞ、店員さんはじめ、お買い物にきているお客さんは何事かと驚いたことでしょう。
道の駅マリンドーム能生に併設されている「かにや横丁」は、なんと言っても日本一の「ベニズワイガニ」直売所ということで有名のようです。
道の駅内は海産物の香りが漂い、ベニズワイガニの華やかな紅色が売り場を彩ります。
すでに私の脳内では、PUFFYの「渚にまつわるエトセトラ」がリピートしています。(今の若い人はあまりピンとこないかもしれません。)
「いや、食べ行こうじゃない!
本当なら今食べれるんだ!」
しかし、残金は1000円ちょっと。
もしかしたら、ここで托鉢をしたらカニの足1本食べられるくらいお布施をもらえるかもしれませんが、どう考えても動機が不純です。
そんな目の前の欲望を満たすために、托鉢はするものではありません。
もう一度ここへ来て、その時は必ずカニを堪能したいと、心に誓うのでした。
「カニ食べ行こう〜♪」
続く
次回予告
初めて1日1話に収まったのではないでしょうか。笑
新潟県最西端の街、糸井川市の「須沢臨海公園」から「道の駅 マリンドリーム能生」までの20kmを歩きました。
この日は、サイクリングロードを歩いたこともあり、人と会うこともなく淡々と歩いた1日でした。
次回は、「道の駅 マリンドーム能生」から、上越市「竜泉寺」を目指します。
vol.15 「浜風と豆太」をお読みいただきありがとうございました(^ ^)
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