イオングループやDMM、アマゾンなどの大企業による僧侶派遣や寺院との提携した格安葬儀ビジネスがかなり増えてきて、価格競争も起こっている昨今。

さらに各葬儀会社もそれぞれ寺院と提携した「仲介」という形態まであり、とてもじゃないけど把握しきれない状況です。

インターネットで調べて、ご遺族が納得できる葬儀・お別れができるならそれに越したことはありませんが、その影で問題も発生し始めています。

それは寺院にとってというよりは、ご遺族にとって深刻な問題です。

今回はそんな、発達した葬儀ビジネスが落とす影の部分に触れ、大変な思いをされる方が増えないことを願う回です。

そもそも葬儀って?

それにはまず、葬儀と戒名についてざっくりとご紹介しておかなければなりません。

葬儀というのは、実は出家の儀式だということをみなさんはご存知でしたか?

お寺やご住職によって異なるかもしれませんが、私の師匠が行う葬儀では実際にカミソリを持っていって頭を剃る「動作」をします。

髪の毛というのは自分を良く見せようという煩悩の象徴とされ、それを剃ることは煩悩を離れることを意味します。

故人の髪の毛を剃るという形で、まずはその方のこれまでの人生に区切りをつけ、これから仏弟子として生きてもらうのです。

髪を剃ることで、身は仏弟子として生きる準備が整った故人にとって、次に必要になるのは心の道標です。

自分のルールではなく、仏弟子として実践していくべき心得をお渡しする必要があります。

その心得が「戒」です。

お釈迦様が説かれた仏弟子としての生き方である「戒」を僧侶が授け、その方がこれから先迷わないようにと願う儀式が葬儀なのです。

 

戒名とは?

そしてその戒を受け、仏弟子となった人の名前を「戒名」と言います。

戒名というのは何も亡くなった方の名前というばかりではありません。

生きている人に付いていることもあります。

その代表が私たち僧侶です。

私であれば「西田稔光にしだとしみつ」という人間が高校生の時に師匠から戒を受け「法雲稔光ほううんしんこう」という戒名をもらいました。

ちなみに、お寺に生まれると、住職である親は出家をすることを視野に入れて名前をつけることがあるので、私の場合は戸籍上の名前と戒名は読みが異なるだけで同じ字を書きます。

なので後から出家した僧侶は、本名と戒名が全く違う場合もあります。祖父がそうでした。

さて、そんな戒名ですが、これはお釈迦様から伝わった戒」を受けた証明でもあり、戒名を授けた人が「師匠」となるわけです。

この師匠というのは僧侶でも簡単に変えることはできず、事態がこじれると師匠を替えるために出家からすべてやり直しということもあるほどです。

ですから戒名をもらう相手は、菩提寺(檀家になっているお寺)があるならばそのお寺の住職、新しくお寺にお墓をとるのならそのお寺の住職である必要があります。

葬儀ビジネスとモラル

しかし近年、葬儀ビジネスの多様化・競争化の中で、ある出来事が起きています。

それは、企業と提携した僧侶が戒名をつけてしまうということ。

これは私の地元で起きていることです。

元々、お寺が決まっていなかったり、お墓が決まっていない方の場合は、仮に葬儀を行ったとしても戒名ではなく俗名で葬儀をするのが地元の寺院間での通例でした。

それはご遺族がその後どうするか決めた時に、決めた先でスムーズにお話が進むようにするためです。

戒名の中には「戒名料」がかかるものもあり、それは日常生活からすれば決して安いものではありません。

それを考えれば、ひとまず戒名をつけないで俗名のまま葬儀をすることがご遺族のため、という風に考えたのです。

ところが最近はそうした説明もなく戒名までつけてあとは放置してしまう、という事例が増えてきているのです。

もしかすると葬儀がビジネス化する中で「戒名=サービスの1つ」となってきている部分があるのかもしれません。

ただでさえ悲しみの中で心に余裕のないご遺族が、仲介する葬儀会社や企業、あるいは派遣された僧侶から勧められれば、そのまま戒名をつけてしまうのも無理はありません。

しかしその後、お寺やお墓を決めた時に、先ほど述べたように「師匠を替える」ことになり、大変な場合だと戒名の付け直しとなり、また戒名料がかかってしまうことになってしまうのです。

大切な人を亡くしたご遺族が、さらに経済的にも辛い思いをしなければならないなんて、こんなことがあっていいわけがありません。

もしご遺骨を預けるのが宗教や宗派を問わない霊園だったら問題ありません

しかし、もしお墓やお墓をとるお寺が決まっている場合はくれぐれもご注意ください

まとめ

・「葬儀だけ」のつもりで付き合う僧侶から戒名をもらう場合は慎重に。

・お寺によっては戒名料がかからない戒名もある。

・信頼できる僧侶を一人見つけておく。

以上の三点が、今の私の立場から申し上げられることです。

また、その土地ごとに地域性がありますので、葬儀会社の方や決めようとしているお寺とは大変でもよく相談しておくことをオススメします。

葬儀の中で不必要なトラブルがなく、故人と納得のいくお別れができることを心から願っています。

 

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