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突然ですが、皆様は仏教が生まれたのはどの瞬間だとお思いになりますか?
およそ2500年前お釈迦様がお覚りを開いた瞬間、そう思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、その時点では一人の人間の「気付き」で終わってしまいます。
お釈迦様が覚られた苦を離れる道は、5人の修行僧に伝えたその時初めて、人を導く教え、仏教となったのです。
そしてそれから、時間も国も超えて、仏教は各地へと伝わり、仏教は世界三大宗教と言われるほどの広がりを見せたのです。
お釈迦様自身も亡くなる直前まで布教の旅を続けられたように、仏教の歴史とはたゆまぬ布教の歴史でもあります。
そして禅活-zenkatsu-のメンバーもその歴史を継ぐべく、曹洞宗総合研究センターという布教について学ぶ場所で出会った4人です。
こうしたインターネット上での活動やイベントの開催は、自分自身の研鑽はもちろん、現代に沿った布教の在り方を模索するためのものでもあります。
しかし、私はある動画を観て、自分の中で知らないうちに限界を作っていたということに気づかされました。
今回はそんな気づきと、そこから見えてきた「伝える」ということの可能性についてのお話です。
Contents
あるアーティストのライブで
まずはこの映像をご覧ください。
これは映画「8mile」のヒットで日本でも有名になったアメリカのラッパー、Eminem(エミネム)の2018年のライブ映像です。
そして手前で踊っているように見える女性。
実はこの方は手話でラップを同時通訳しているのです。
私は手話に触れる機会がほとんどなく、ニュース番組の画面の端に映るか、政治関係の記者会見で横にいらっしゃる時ぐらいしか観たことがありませんでした。
そんな私にとってはこの動きの激しさ、そしてラップを損なわないノリの良さがとても衝撃でした。
さらに、女性が手話通訳をしているこの「Rap GOD」という曲、実は2014年にギネス世界記録で「もっとも単語数の多いヒット・シングル」に認定された超高速ラップなのです。
それはつまり、「世界一早いラップ」の手話通訳がすでに達成されているということになります。
アメリカでは、2013年頃から自身のツアーに手話通訳者を同行させるアーティストが出始め、それ以降大きなミュージックフェスティバルで手話通訳が導入されるケースが増えてきました。
語数やリズム感に特徴があるラップは特にその通訳が難しいらしく、通訳者は50〜80時間をかけて準備をすることもあるのだそうです。
Eminemをはじめとするアーティスト達の、より多くの人へ曲を届けようとする姿勢、そして手話通訳者の努力が、音を楽しむという可能性を大きく広げたのです。
手法による可能性の拡大
私にも、多少共感のできる経験があります。
私は現在、曹洞宗総合研究センターの教化研修部門の研究部という若手僧侶の育成機関に在籍しながら活動をしています。
昨年までの3年間は、同部門の研修部という過程に在籍していました。
その研修部では、年に一度、曹洞宗寺院が運営する保育園・幼稚園で演劇を通した布教活動を行います。
仏教の教えを噛み砕き、それをストーリーの精神性として絡ませた台本を作り、大道具や衣装も作り、練習を重ねます。
そして本番を迎えると、園児たちはこちらが驚くほど伝えたいところを汲み取り、感想をくれるのです。
それは幼い子どもがどんなことを喜び、どんな方法なら理解ができるのかを考え、台本や大道具、証明や音響にいたるまで、苦悩と工夫を積み重ねた結果でした。
この経験を通して私は、相手に合った手法の選択と、ちゃんと伝えようとする工夫や努力次第で、仏教は伝えるということ、布教にはまだまだ可能性があると、実感することができました。
これからの時代にどう仏教を伝えるか
お釈迦様の布教
お釈迦様がおられた時代、インドでは王族よりも権力のある階級、バラモンの人々だけが宗教を理解し、司ることのできる存在でした。
そしてバラモンという階級の人々だけに理解ができた理由が、言葉です。
『ヴェーダ』と呼ばれる聖典は、バラモンだけが理解できる「聖なる言葉」で構成され、バラモンだけが意味を知り、発音できることでその宗教とバラモンの神聖さは保たれていました。
それに対して誰にでもわかる言葉で、わかりやすく教えを説いたのがお釈迦様でした。
仏教は決して一部の人間の為のものではなく苦しみを抱える全て人を救うものにするため、布教に行く弟子たちに対しても、誰にでもわかる言葉で話すようにと説かれたのです。
実際に仏典には、その土地その土地の言葉、いわゆる方言で教えを説くように、とまで書かれています。
そんなお釈迦様の教えを伝え、導いていくということに対する柔軟な姿勢や発想が、2500年もの間、世界中に仏教を伝えることを可能にしたのです。
これからの時代
それでは今、そしてこれから、私は仏教を伝えて行くために何をするべきか。
もちろん手話や点字、音楽や絵や映像など、様々な手法を自分で身につけられればそれに越したことはありません。
しかし、それにはどうしても限界があります。
そこで、Eminemが自分の音楽を届けるべく手話通訳を頼んだように、専門的なことは専門の方を頼ることも重要です。
それはすでに私たち禅活の活動が、料理の専門家であるこまきしょくどうの藤井小牧さんのバックアップやウェブの専門家である堀田の加入によって支えらてきたことでも実感しています。
仏教は僧侶だけで考え、僧侶だけで発信するのではなく、みんなで考えながら発信していく時代がきているのだと思います。
さらに、これからは5G回線など、インターネット技術のさらなる発展で、これまで以上に様々な言葉、立場、特性を持った方に仏教を伝える機会が増える時代になっていくでしょう。
仏教に関心を持ったり、悩み苦しみを抱えて自分の目の前に現れたその方に、ちゃんと大切なことを伝えることのできる選択肢を持つことが、お釈迦様から与えられた課題なのかもしれません。
当然、仏教を伝える手法として許されるものの境界線など、課題はたくさんあります。
しかしそんな課題も含めて、私は禅活の活動を通して、僧侶だけでなくあらゆるジャンルの方の力を借りながら、仏教を伝えていく可能性を広げていきたいと思います。
参考記事
ケンドリックのロラパルーザを機に話題のライブ手話通訳。本番に向けた準備の裏側とは?
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