【永平寺から無一文で歩いて帰るもん。】vol.3 初日の挫折

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これは私、深澤亮道が福井から岩手までの700Kmを無一文で歩いて帰った物語である。

Contents

前回までのあらすじ

vol.1ではプロローグとして「歩いて帰るきっかけ

vol.2では「自分で定めたルール」と「出発までの裏話」をお送りしました。

まだ【永平寺から無一文で歩いて帰るもん。】をご覧になっていない方、朗報です!

前回までのサブタイトルからわかる通り・・・

実はまだ、永平寺を出発していません!笑

vol.1、vol.2を読んでいただいた皆さま、とてもモヤモヤさせてしまい申し訳ありません。

今度こそ永平寺を出発します!

前回までは、モーガン・フリーマンが悩んだ結果歩いて帰ることを決意し、チェ・ゲバラの気持ちになったところまでお送りしました。

もし読まれていない方は是非vol.1、vol.2をお読みいただいてからvol.3を読んでいただけたら幸いです。

今回は「初日の挫折」をお送りしたいと思います。

門前のお姉さま達に施され

福井県の中心である福井駅から車を30分ほど走らせた、人里離れた山の中に大本山永平寺はあります。

初めて行く人は必ず思うのではないでしょうか。

想像以上に山の中にあると。

道元禅師は、師匠である如浄禅師から「深山幽谷しんざんゆうこくにて仏の道を行じ、仏の弟子を育てなさい」と教えを受けます。

その教えに従いこの地に永平寺(旧大仏寺)を開き約800年経ちますが、今でもまさしく深山幽谷しんざんゆうこくとはこういう場所だと言うのだと納得してしまうくらい山の中です。

しかし、山の中といえど福井県でも有数の観光地である永平寺は毎年50万人を越える参拝者が訪れます。

その永平寺の門前には数十軒ほどのお土産屋、お食事処が連なっています。

修行中は基本的にこの永平寺門前のお店に行くことも許されませんが…

4年以上修行した私は、所用で門前に行くことが多く、自然と門前の人たちと仲良くなっていました。

10日振りに永平寺に帰り、門前を歩いていると旅館東喜家とうきやの名物女将みっちゃんから声をかけられました。

み「あれ?どうしたの?帰ったんじゃないのかい?

私「これから托鉢をしながら岩手まで歩いて帰るから、また戻ってきた!

み「本当かい!それならうちのカツ丼を食べていきなよ。お布施としてご馳走してあげるからさ。

永平寺修行前、最後にこのカツ丼を食べたお坊さんも少なくないでしょう。

そんな修行僧思い出の味、それが東喜家のカツ丼です!

お布施は全ていただくと決めていた私は、私は有り難くカツ丼を頂きました。

さて、カツ丼もいただき元気いっぱいになった私は、旅支度を整えついに出発の時を迎えました。

み「托鉢をしているんだったら少しだけどお布施するよ!

私が托鉢をして歩いて帰ると知った門前のてらぐちかいどのお姉さま方からも言われ500円ずつお布施をいただきました。

門前のお姉さま方から、この旅初めてお布施をいただき、その重みを握りしめ永平寺を出発しました。

初日のルート

初日は永平寺から26Km先にある、石川県加賀市「山中温泉ゆけむり健康村ゆーゆー館」という道の駅で野宿をしようと考えていました。

温泉ではありません!野宿です!

石川県に抜けるには2通りのルートがありました。

1つは坂井市やあわら市を通る遠回りのルートと、もう1つは私が選んだ峠を越えるルートです。

グーグルマップなどで検索をすると、だいたい坂井市、あわら市を通るルートが表示されるのですが、私は距離が短いと思われる峠越えを選択しました。

急がば回れとは本当にその通りだと後々痛感することになります…。

この選択が、初日の挫折を生むことになるのでした。

山の中腹で

よし!やってやるぞ!頑張るぞ!

お昼の12時頃、意気揚々と永平寺を出発した私。

手にした錫杖しゃくじょうがシャリン、シャリンと歩むスピードに合わせて鳴ります。

現在は遊歩道になっていますが、昔は永平寺門前まで電車が走っていた路線跡を進みます。

慣れ親しんだ、のどかな田園風景。

最初に永平寺に来た時は、この景色がどこか知らない世界に繋がる地獄の道のように感じていましたが、この景色を「のどか」と感じれたこのとき、私の中で「永平寺が第2の故郷」になっていることに気づきました。

頑張るぞ!という気持ちと、どこか寂しさのような、後ろ髪(無いですけど)をひかれるような思いがしました。

永平寺から一番の最寄り駅である、えちぜん鉄道永平寺口駅までの6Kmはこの田園風景が続きます。

余談ですが、このえちぜん鉄道、バスガイドならぬ、電車ガイドが観光案内を行う電車として有名です。

福井に来た際には是非ご利用下さい。(企業案件ではありません!)

LINEトラベルjp 写真:モノホシ ダン

永平寺口駅もさらに直進し、九頭竜川を渡るとそこから山中温泉に続く山道に入ります。

日没前には目的地に着きたかったため、かなりハイペースで歩いていました。

永平寺を出発して2時間半くらい経ち、町を一望できる辺りまで歩いた頃、なんとなくお腹に違和感を感じるようになりました

あれ?なんか、お腹が痛い…

ガスが溜まっているだけと思い、そのまま歩みを進めますが、痛みは治るどころかだんだん酷くなっていきます。

やばい…これは痛すぎる…

急に走り出した時に見られる腹痛とも違う、胃腸炎のような痛みが徐々に増していきます。

痛みを我慢しても良くならないので、道脇にあった東屋あずまやで一休みすることにしました。

お昼に食べたカツ丼が頭をよぎります。(施しをいただいたのに失礼)

施された豚肉によって食中毒にかかり亡くなったお釈迦様と自分が重なります。(お釈迦様と重ねるなんて偉そうに)

脂汗が額から流れ、同時に寒気もしてきました。

日本100名山を登り、現在は海外にも登山に行っている母、政子から渡された遭難グッズであるサバイバルシート(保温シート)に身を包みます。

まさかこんなに早くサバイバルシートを使うことになるとは。

いや、母親は何者だよ!という皆さんのツッコミをさておき、話を進めます。

出発して早3時間弱で、無一文の旅を断念してしまうことになるのではないか。

映画『サマーウォーズ』で、ハッキングAI「ラブマシーン」に呆気なく破れて最強アバター「キングカズマ」を奪わてしまった池沢いけざわ 佳主馬かずまと同じくらい悔しさがこみ上げてきます。

そんな思いと悔しさがこみあげてくる中、段々と私の意識は遠のいていきました。

2度目の挫折

常備薬で持っていた痛み止めを水なしで飲み込み、3時間くらい横になっていると、お腹の痛みが少し良くなってきました。

よし…このくらいなら歩ける!

完全に痛みは取れていませんが、もう一度力を振り絞り、歩き始めます。

しかし、時刻はすでに17時半をまわっていました

本来ならば、そろそろ目的地についている時間。

距離にすると残り12km

万全な状態でも3時間歩かなければたどり着けません。

段々段々、辺り一面が、闇に包まれていきます。

山の中が暗くなるのは予想以上に早く、歩道も狭いため、たまに通る車が私にぶつかるのではないかという恐怖に怯えながらも一歩一歩、歩みを進めます。

暗闇と空腹が私の体力を奪っていきます。

初日は余裕で目的地まで行けると思っていました。

まさか最初からこんなに辛いとは…

無一文で歩いて帰ると決意した気持ち。

永平寺門前で初めてお布施をいただき頑張って歩き切ると決意した気持ち。

最初のやる気と意欲が何処へやら。

完全に心が折れかかっていました。

イメージ図

漆黒のリリー・フランキー

完全に闇に包まれた、19時過ぎ。

真っ暗闇の中で煌々とハザードランプが光っています。

私の歩く道の先に白いバンが停まっています。

なぜこんなところで車が停まっているのだろう・・・?

イメージ図

恐る恐るバンの横を通ろうとしたその時、

おい!乗れ!

運転席からリリー・フランキーに似た強面で坊主のおじさんが乱暴な口調で私に声をかけてきました。

私の中で時が止まり、色んな思いが頭の中で瞬時に駆け巡りました。

こんな山の中で知らないおじさんの車の中に乗って拉致られる!

いや、だけど今心が折れかけていたのでは?

だけどだけど口調からして見た目からして率直に怖い!

いやいや、いただいたお布施は全ていただくのではないか?

ホラー好きの私でも心臓の音が聞こえるくらい高鳴っていましたが、これも全てお布施と捉え、恐怖に慄きながらも

はいっっっ!!

と、返事をしました。

そうして、漆黒の暗闇の中、どう見ても不審な格好をした私が、強面のおじさんが運転する不審な白いバンに乗り込むのでした。

続く

次回予告

vol.3にして、ついに永平寺を出発した深澤亮道。

しかし、初日とは思えないトラブルが次々と起こります。

無一文の旅とはこんなに辛いものなのか?

次回は、強面のおじさんの車に乗ってからの出来事

そして、初の野宿と2日目石川県小松市までの道のりをお届けできたらと思います!

vol.3「初日の挫折」をお読みいただきありがとうございました(^ ^)

続きはこちら↓

 

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