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2度目の緊急事態宣言から間も無く1ヶ月。
東京などの都市部を中心に、未だ収束の兆しは見えこず、さらに1ヶ月の延長が決まりました。
こうした状況が続いて間も無く1年。
失ったもの、できなくことは数知れません。
ところが、そうしたネガティブにならざるを得ない状況で、希望をくれる動きを見せてくれたものの一つが、日本のラップシーンでした。
今回は、コロナ禍を逆手にとって生まれた3曲をご紹介します。
Contents
Zoomgalsの登場
コロナ禍で失った一番大きなものが、人と顔を合わせることでしょう。
そしてそれを補うかのように急速に普及したのがオンライン通話アプリ「Zoom」です。
URLとは何か?から説明しなくてはならない超アナログ人間の我が師匠ですら導入して使っているので、その普及率たるや。
企業、学校、坐禅会…。
様々な場面で目にすることになったこのZoomは、マナーまで説かれるようになりました。
そんな、決して望まない形で出会ったこの小窓が映った画面に、辟易した方も多かったことでしょう。
そんな2020年5月、突如として発表された曲がまさしく「Zoom」です。
valknee(バルニー)、 田島ハルコ、なみちえ、ASOBOiSM(アソボイズム)、 Marukido(マルキド)、 あっこゴリラという6名の女性ラッパーが、Zoomを模した画面上でマイクリレーをするMVに、私は衝撃を受けました。
さらにおもしろいのがその歌詞です。
「盛れたら集まるZoom」といういかにもギャルらしい発想に始まり、そこから各々が抱える鬱憤をラップにしていくわけですが、これが悲壮感のない、楽しそうとすら思えるものなのです。
コロナ禍のフラストレーションを発散するその様子は、なぜかこちらを前向きな気持ちにしてくれる気がしました。
そして、この状況だからこそ生まれたこの曲をきっかけに、この6名は「Zoomgals(ズームギャルズ)」というユニットで活動を続けています。
ライブ配信から生まれた曲
Zoomgalsのようなポジティブな気持ちになれる動きはあったものの、ライブやイベントが中心だったヒップホップシーンが大打撃を受けたことには変わりはありません。
渋谷の老舗のクラブがコロナ禍で閉店してしまったのも悲しい出来事でした。
そんな状況下で同じく大変な思いをしているのがDJです。
人が集まる場で音楽をかけることが仕事なのに、その場を設けることが許されない。
そこで盛んになったのが、ライブ配信でのDJプレイでした。
DJ HASEBEさんのようなベテランDJから、若手まで、多くのDJがSNSやYouTubeなどでライブ配信をするようになりました。
場所を選ばずに配信ができ、投げ銭などの収入の可能性が見込めるライブ配信は、DJにとっては数少ない活動手段といえるでしょう。
ダンスイベントで絶大な人気を誇るDJ Hiroking(ヒロキング)さんも、コロナ禍にライブ配信を始めたDJの一人です。
ただ、はじめは苦手意識などがあり乗り気ではなかったようで、告知などはせずひっそりと配信を始めたそうです。
配信を始めたのは17ライブというアプリ。
アイテムによる投げ銭のシステムがあり、中には超高額の収入を得ている配信者もいるとか。
ただし今回触れたいのはそこではなく、DJ Hirokingさんはこの配信きっかけに、別の配信者のシンガーさんと曲を作り、リリースに至ったのです。
コロナ以前にはやるつもりのなかったライブ配信をきっかけに生まれたのが、この曲でした。
ご本人いわく、自分が配信をするとは思っていなかったし、曲を作るという話も社交辞令で終わりやすい中で、一つの作品ができたのは思いがけない出来事であったようです。
KREVAのメッセージ
そして、この一年で私が強烈にメッセージを受け取ったのが、KREVAさんです。
(KREVA公式HPより引用)
自身名義での曲はもちろん、フィーチャリングで参加した曲の多くで、今だからこそ理想や希望を口にしようとしているような印象を受けました。
特に、昨年末に出された「Fall in Love Again feat. 三浦大知」は、一年を通して伝えてきたメッセージの総括のようにすら思える曲でした。
どんなに辛くても死んじゃダメ きっと俺らはフォーリンラバゲン
Big Party から上品な宴 君がいるから盛り上がれる
皆 平等に時が経って あれはあれで楽しかったね
なんて笑ってコーヒーあっためる そんな未来想像しちゃってる
この一年の作品の中でも、明確に希望や励ましを歌詞にしており、KREVAさんがラッパーとしてこの状況をどう生きようとしたかが伝わってくるようです。
KREVAさんの曲は中学生の頃から聴いていますが、コロナ禍でより活発にアクションを起こすその姿に痺れてしまいました。
縁との向き合い方
今回この3曲をご紹介したのは、僧侶として素晴らしいと思う理由があったからです。
日本人は、良縁・悪縁という言葉を使います。
縁には良いものと悪いものがあり、良いものは手繰り寄せ、悪いものは遠ざけるものとして捉えられます。
ところが、仏教でいう縁とは、単純な「条件」や「きっかけ」であって、そこに本来良し悪しはありません。
その縁が人生を正しい方向に導いてくれれば良縁になるし、悪い方に転がっていけば悪縁になります。
つまり、それが良縁になるか悪縁になるかは、私たちの受け止め方次第なのです。
そして仏教というのは、あらゆる縁を良縁としていく生き方を説くものです。
今回ご紹介した三曲には、コロナウイルスという未曾有の存在に対して、それすら良縁にしてしまおうという、カウンターカルチャーであるヒップホップならではの強さと、ある意味では仏教的な姿勢を垣間見たような気がします。
もちろんこれは簡単なことではありませんが、こんな時代だからこそ、あらゆる縁を良縁としていくような生き方を目指していきたいですね!