【僧侶的よろずレビュー#21】シガレット&チェリー(漫画)

久しぶりのこちらの企画。

僧侶の視点から良いと思った色んなものをご紹介する企画なわけですが、今週はもう書かざるを得ないというか。

今回はそんな漫画に出会いました。

これだけ心を持ってかれているその理由を自分で文章にしながら考えていきたいと思います。

そのためこれはレビューというか自己分析みたいなものですが、よろしければお付き合いください。

Contents

本日のテーマ

さて、こんなに読み返したくなる漫画は久しぶりでした。

私は普段から漫画アプリでコツコツ広告を消化しながら無料で読むことが多いのですが、
その内容がよかったら貢献のつもりで課金して読んだりもします。

そして、今回取り上げる作品はその課金をした上で紙媒体も全巻買ってしまいました。

その漫画のタイトルは「シガレット&チェリー」(河上だいしろう作)。

完結した後にこの作品を知ったので細かく連載などの経緯は存じ上げないのですが、
元々は作者の河上先生がTwitterやinstagramに投稿していたもののようです。

それが話題となり、2017年からマンガ配信サイト『チャンピオンクロス』で連載が始まり、
2018年からはその後継サイトである『マンガクロス』で継続、2020年に完結しました。

「シガレット&チェリー」あらすじ

このマンガはジャンルでいうと、ラブコメです。

自分でも驚いています。笑

この作品の登場人物には名前がありません。

主人公は大学デビューを機に彼女を作ろうと息巻く恋愛経験のない男子、通称後輩

彼が大学の喫煙所で出会ったのはクールで美人な大学院生の先輩でした。

本やネットから得た知識を使ってなんとか振り向かせようとするも上手くいかず、
その中で人として成長していくというのが大筋です。

つまりタイトルの「シガレット&チェリー」というのは、喫煙者の先輩チェリーボーイの後輩のことなんですね。

また、登場人物はさほど多くなく、二人意外にはアルバイト先のカフェの店長であるおじいさんと、
同じく働くバイト仲間の女性と男性、店長の孫娘の4人くらいです。

決して多くない登場人物の個性の豊かさが、この作品の最大の魅力ともいえるでしょう。

 

完璧な人とは?

この作品では、美人で仕事ができて気遣いもできる先輩の「完璧さ」が物語の鍵となります。

主人公はその完璧に見える先輩に劣らないよう、背伸びをして空回りする、ということが何度も繰り返されます。

しかし、その完璧さの裏で先輩は人を頼れないことや感情を表に出せないことを気にしていました。

それ故に、先輩は主人公の不器用で感情がわかりやすいところに心を打たれたりもします。

これは二人だけでなく、若い登場人物は、みんなそれぞれに人間関係の中で自分の「完璧じゃなさ」に気づいていきます。

そうして失敗しながらも成長していく過程は、誰もが経験したものではないでしょうか。

不器用、感情を隠せない、人に甘えられない、正論を言ってしまう、自分に自身がない、自分を取り繕ってしまう…。

しかしそんな「完璧じゃなさ」が、人と人を繋いでいるのだと改めて気づかされました。

大切なことは自分が完璧になることではなく、足りないところを補い合うことことなんですよね。

10巻109P

特殊な感情移入

そしてこの作品の良さを改めて考えた時に、登場人物に具体的な名前をつけないことで、
ある特殊な感情移入の仕方ができているのではないか、と思い至りました。

例えば、登場人物にアルバイト中のナマジメ君がいます。
(名前の由来は生真面目をナマジメと読んでいたため)

ナマジメ君は物腰が柔らかいながら冗談が通じず、名前の通り真面目でまっすぐな人間です。

そのため、言うべきと思ったことはストレートに口にし、それが人を喜ばせることもあれば傷つけることもあります。

そんな彼が自分の欠点に気付けない時、カフェの店長から
〈「伝える」って事にはちゃんと責任がいるんだよ〉と諭された時、初めて自分の言葉を顧みるのです。

というか、この店長のキャラクターが本当に素晴らしくて、
「どこかしら未熟さを抱える若者が店長から大切なことに気づかされる物語」といってもいいくらい、グッとくる言葉がたくさんあります。

少し話が逸れましたが、登場人物の一人一人は個性が強くて「あくまで漫画のキャラクターだな」と思うかもしれませんが、
誰もが自分の側面として少なからずそういう一面を持っていると思うと、心のピンポイントに刺さってきます

人間の心をいくつかに分割して別々のキャラクターにした感じ、という言い方で伝わるでしょうか。

もちろん感じ方の多少は人によって異なるでしょうが、自分の心に含まれる要素が、この作品には急に現れるのです。

まとめ

以上、思いつくままに私が異様にのめり込んだ理由を書いてみました。

正直私は恋愛模様そのものにあまり共感はなく、登場人物の完璧じゃなさにすごく惹かれてしまったのだと思います

完璧に見えて完璧じゃない、ダメに見えてすごく魅力がある、そんな人間の凸凹が絶妙に描いた描写が魅力の作品です。

漫画アプリでも読めるのでまずは3話目くらいまでお読みになってみてはいかがでしょうか。

☆こんな方にオススメ☆

・甘いだけのラブコメが読みたいわけじゃない

・人間関係や恋愛で悩んでいることがある

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