
大相撲春場所は大波乱の場所となりました。
圧倒的強さを誇った横綱照ノ富士関がケガによる休場となり、本場所は中日を待たずに群雄割拠の様相を呈します。
そんな中、元大関の高安関、元横綱の琴櫻の孫である琴ノ若関、新関脇の若隆景関などが順調に星を伸ばしていき、
千秋楽では、高安関と若隆景関が星の数で並びます。
優勝決定戦にまでもつれ込む激闘のすえ、みごと若隆景関が幕内最高優勝を勝ち取りました。
新関脇の優勝は、かの双葉山関以来86年ぶりの快挙であるとのこと。
決定戦の内容も、両者の勝利に対するすさまじいまでの執念が感じられる取り組みで、まさに大相撲史に残る名勝負となりました。
また正代関、貴景勝関、御嶽海関の三大関も揃って勝ち越しとなり、場所を盛り上げてくれました。
まず場所前に新型コロナウイルスに感染し、十分な稽古を積めていないことが懸念されていた、角番の正代関。
6日目にして、1勝5敗。
相撲の内容も悪く、大関陥落やむなしかと思われましたが、7日目以降は8勝1敗と大きく勝ち越し、意地を見せてくれました。
同じく角番の貴景勝関。
こちらも頸椎のケガなどで、思うような成績を残せずにいましたが、今場所は持ち前の押し相撲が復活し、9勝6敗で角番を脱出しました。
まだまだ万全ではない状況だとは思いますが、今後の活躍に期待が持てる内容だったと思います。
そして、新大関の御嶽海関。
先場所から安定した強さを見せつけ、今場所も途中までは優勝争いにしっかりと絡んでくる活躍で、11勝4敗。
負けるときは不思議と簡単に負けてしまうムラッ気もありますが、来場所以降もきっと土俵を沸かせてくれることでしょう。
ここまでに挙げた関取以外にも、素晴らしい取り組みを見せてくれた力士はたくさんおりましたが、こんな感じで相撲内容を振り返っていたら、あまりにも長くなってしまいますので、この辺りでやめておきます。
……で、
ここからが、本題。(前置きが長くてすいません…💦)
今回の記事のテーマは、関取が好きなマンガについて!です。
Contents
マンガ『バチバチ』シリーズ
今場所、幕内の志摩ノ海関が『ジョジョの奇妙な冒険』の化粧まわしを付けたことが大きな話題になりましたが、
その他にも、元横綱稀勢の里の『北斗の拳』、千代大龍関の『キン肉マン』、御嶽海関の『クローズ』など、
化粧まわしにするほど熱烈なマンガ愛を持った関取も数多くいます。
今回、関取が好きなマンガについて記事にしようと思い立ったのは、
禅活のちしょーとしんこうが愛してやまない、佐藤タカヒロ先生による相撲マンガ『バチバチ』シリーズを読み返したことがきっかけでした。
春場所の熱気にあてられて、『バチバチ』シリーズを読み返していたところ、
「マンガ『バチバチ』シリーズが好きな力士はいるんだろうか?」
と、どうしても気になったのです。
このマンガのおおまかな内容は、元大関の父を持つ、主人公の鮫島鯉太郎が大相撲の世界に飛び込んで活躍していく成長物語となっております。
シリーズは『バチバチ』『バチバチBURST』『鮫島最後の十五日』の三部作で、全48巻の未完の大作です。
これがとにかく熱い!!
YouTubeの動画の方でも取り上げ、また、ライブ配信でもたびたび話題としておりますが、
スポーツマンガ、バトルマンガの一つの完成形と言って過言ではありません。
ひとつの物語は、ときにその人の生き方すらも変えてしまうほどの力を持つと私は考えていますが、
この『バチバチ』シリーズもまさに、そうした「人を変える」だけの、力と熱量と愛情によって作られた作品です。
『バチバチ』に感化されて力士になった……もしも、そんな関取がいたなら是非知りたい!
そう思ったら、居ても立ってもいられませんでした。
プロフィールを見てみよう!
日本相撲協会の公式HPには、身長体重はじめ得意な取り口や決まり手の割合などを掲載した、力士のプロフィールがあります。
そして、十両以上の関取になると、そこに「力士アンケート」の項目が加わります。
その内容は、
「相撲を始めた年齢」
「好きなアーティスト」
「趣味・マイブーム」
「好きな食べ物」
「好きなテレビ番組・YouTubeチャンネル」
「好きなマンガ・アニメ・映画」
というもの。
こうしたプロフィールの中に自分と重なるものを見つけると、
「あ、この人も○○が好きなんだ♥」
と、嬉しくなって、親近感が湧いてきます。
応援したい気持ちも一層増すことでしょう。
逆の使い方をするなら「○○が好きな人はいるかなあ?」と、
自分と重なる「何か」を持った関取を探すこともできます。
私の場合、最大の関心事は、好きなマンガ・アニメ・映画の項目に『バチバチ』を挙げている関取がいるかどうかでした。
しかし、調べるうちに、それ以外にも関取の好きなマンガに面白い特徴があることがわかりました。
関取はどんなマンガを読んでいる?
その特徴とは、
マンガのジャンルに大きな偏りがあるということです。
関取が好きなマンガは、
「バトルマンガ」
これだけで8割を超えます!
『カイジ』、『アカギ』などのギャンブルマンガや、『アイシールド21』、『SLAMDUNK』といったスポーツマンガ、ヤンキーマンガなどを挙げている関取もいますが、これらも「バトル」の要素を多分に含んでいます。
バトル要素のない、恋愛マンガ、グルメマンガなどは、ほぼ存在していません。
厳しい大相撲の世界に生きる関取たちにとって、そんな「ぬるい」マンガは共感が難しく、読んでいられないのかもしれません。
ちなみに、そんなバトルマンガの中でも、10名以上の関取に支持され、圧倒的に多かったのが「ワンピース」でした。
その理由を考えてみたところ、やはり「長期連載」かつ「物語が現在進行形」であるというところが大きいかと思います。
幕内最年長37歳の玉鷲関から新十両で19歳の熱海富士関まで年代を超えて読まれ、コア層からライト層まで幅広く取り込む「ワンピース」が、まさにモンスター連載なのだということがよくわかりました。
一方、連載開始が2016年と比較的最近のせいか、バトルマンガであるにも関わらず「鬼滅の刃」を挙げている力士は一人もいませんでした。
また「ワンピース」のほかに、複数の支持を集めたマンガには「キン肉マン」「ドラゴンボール」「キングダム」「ジョジョの奇妙な冒険」「こち亀」などがありました(ほとんどバトルマンガ)。
肝心の『バチバチ』は……?
関取にバトルマンガが好まれることはお分かりいただけたかと思います。
『バチバチ』シリーズは「長期連載」かつ、バトル要素やヤンキー要素も多分に含んだ物語。
これが好かれないわけはない!
と、関取ひとりひとりのプロフィールを番付上位から順に調べていきましたが……
一向に『バチバチ』の名前が出てこない……!
というか、相撲マンガを挙げている関取がほとんどいない……!
ようやく見つけたのが、西前頭8枚目、佐田の海関の『のたり松太郎』。
気づけば、幕内力士を見終えてしまいました。
残るは十両の関取衆のプロフィール。
祈るような気持ちで、ひとりひとり調べていきます。
ワンピース……キン肉マン……こち亀……ワンピース……ワンピース……
もう、ワンピース多すぎだろっ!
半ば諦めかけたその時、ついに発見しました!
それは、西十両4枚目、魁勝関のプロフィール。
そこに、
『バナバナ』と書かれていたのです!
……ん?なにかおかしいぞ?
目元をこすってもう一度よく見てみます。
『バナバナ』
見間違いではありません。
そこには確かに『バナバナ』と書かれていました。(最終閲覧日:2022/4/1)
そう、
まさか、
まさかの、
誤植です。
もしかすると『バナバナ』というマンガが存在しているのかもしれない、と思い、
念のため、Googleで「バナバナ マンガ」で検索してみましたが、
そんなマンガは存在していない様子。
よりにもよって、どうして狙いすましたかのように『バチバチ』だけ誤植するのか!?
数少ない相撲マンガ。
大相撲の世界を描き続けて48巻。
文字通り、命をかけて生み出された超大作。
それを、誤植とは……
さすがに、ちょっとばかり「おこ」。
悲しみに暮れる、その中で思うこと
関取が好きなマンガに『バチバチ』は存在しなかった。
存在しないはずの『バナバナ』は存在したというのに。
この事実は、私の心をひどく傷つけた。
一体なぜ、このようなことになってしまったのか。
ジャンプで連載されていればよかったのか。
何度だって言おう。
『バチバチ』はスポーツマンガ、バトルマンガの完成形である。
世が世なら唯一無二の名作として語り継がれ、
相撲を志すあらゆる少年少女のバイブルとして、
綿々脈々と受け継がれていくに相応しい作品である。
その作品が何故、このような扱いを受けねばならぬのか。
『バチバチ』は多くの人に知られることもなく、まして読まれることもなく、ひっそりと消えてしまっていい作品ではない。
だから、せめて。
私はひとりのファンとして、
これからも『バチバチ』の魅力を伝えていきたいと思う。