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僧侶の視点で触れて学びや気づきのあったものをご紹介する【僧侶的よろずレビュー】。

前回は「拝啓 元トモ様」という本を紹介しました。

今回はテレビ東京の番組、ハイパーハードボイルドグルメリポートをご紹介します。

私たちは普段どうやって食べているか。

どうやって生きているか。

生きることをどう感じているか。

そんなこと考えさせてくれるドキュメンタリー番組です。

#7「ハイパーハードボイルドグルメリポート」

この番組は、2017年から深夜帯に不定期で放送されましたが、そのショッキングな内容故ゆえに制作が一時中断され、2018年に「ウルトラハイパーハードボイルドグルメリポート」と番組名を改め、2時間スペシャルで復活を果たしました。

現在ではAmazonビデオ(Prime Video)テレビ東京のオンデマンド配信サービスなどで視聴することができます。

出演者はお笑い芸人の小藪一豊さん一人、セットはモニターとパイプ椅子のみ。

そして内容も、現地に取材に行ったディレクターがVTRを紹介し、小藪さんが観るという、いたってシンプルなものです。

しかし、そのVTRが視聴者にとてつもない衝撃を与えてくるのです。

「世界のヤバい奴らは何食ってんだ?」

をテーマに、様々な状況で暮らす人々の食を訪ねていくこの番組。

正直なところ、私は初めおもしろ半分に「世界のヤバい奴ら」という言い方が好きではなく、冒頭のテロップのこの一文で、少し心が離れてしまいました。

しかし、そこで生まれた不快感は、映像を見た後、思わぬ気づきとともに解消されることになります。

リベリアの元少年兵

ここで、特に印象に残ったエピソードをご紹介します。

それはエピソード1のアフリカ、リベリア共和国の元少年兵のお話です。

激しい内戦の中で親を失った子どもたちは、拉致されたり、時にはその復讐心を利用され、そして生きていくために兵士となりました。

少年兵は恐怖心を無くすためにドラッグ漬けにされ、仮装をすることで自分の素顔を隠して戦場に送られたそうです。

そしてこの番組で密着したのが、2003年に終結した内戦を生き延びた元少年兵たちです。

世代としては20代〜30代、仕事や盗みで得たお金のほとんどをドラッグにつぎ込む彼らは、共同墓地で生活をしています。

その中で密着取材を受けてくれたのが、28歳の女性・ラフテーでした。

元少年兵、ラフテーの生活

内戦で両親を失った彼女は、復讐のために兵士となって生き抜いて、内戦が終結しても通常の生活には戻れませんでした。

現在は娼婦としてなんとかお金を稼ぎ、ご飯やドラッグを買う彼女の生活に、カメラは密着しました。

夜、彼女は客を一人とると、200リベリアドル(日本円で200円)ほどの報酬を得ます。

海外は物価が違うから、200円もあればそれなりのものが買えるのでは?と思いきや、闇市のカレーが一杯150円なのです。

つまり、身体を売って一人の客をとり、決して贅沢とは言えない食事をする。

そして墓地で眠りにつく。

私は自分と歳の変わらない彼女の生活に、どんな感想を抱いてよいかもわかりませんでした。

そこに、取材をしたディレクターはこう尋ねます。

「あなたは今幸せですか?」

私は、なんて残酷な人なんだ!と思いました。

しかし、それに対して彼女はすぐに「幸せだよ」と答えるのです。

さらに「路上でお金稼いで、食べて帰って眠れるんだもん」と続けます。

その言葉が本心なのか皮肉なのか、私にはわかりません。

彼女は、その日最初で最後の食事を綺麗に食べきるのでした。

登場人物の共通点

この番組で取り上げられる人々は貧しい人や困窮している人だけではありません。

ロシアの奥地でひっそりと集団生活をする新興宗教の信者たちアメリカのギャングなど、様々です。

しかし、そんな人々にはある共通点がありました。

それは、ディレクターが「ご飯を見せてくれますか?」と聞くと、多くの人が「お腹空いたの?」と聞くことです。

日本人が、急に食事を見せてくれと言われたらよほど有名な番組でもない限り「なぜ?」と聞き返してしまうはず。

しかしそうではなく、決して余裕があるわけではないその人が、他人の空腹の心配をするのです。

そしてもう一つは、必ず自分の食べているものを「食べる?」と言って分けようとしてくれることです。

先ほど紹介したリベリアの元少女兵の女性・ラフテーもそうです。

その日の稼ぎでようやく手に入れて食事を、赤の他人に薦めるのです。

ようやく手に入れた食事を、海外から来たジャーナリストに分けようとする心が、私には眩しく映りました。

もしかすると、取材に応じた謝礼などもあるかもしれません。

しかしそれでも、あの状況で自分の物を分け与えるという心が出てくること、これがとても尊く感じたのです。

「食べる」と「生きる」

私が感じたこの番組の「世界のヤバい奴らは、どんな飯食ってんだ?」という冒頭の一文や、各エピソードへのタイトルの付け方への不快感は、ディレクターの上出遼平氏の言葉で、どこか納得がいきました。

この番組に関しては、厳しい状況に置かれている人たちが主役だから、彼らへのリスペクトや共感を忘れない人がつくらないと絶対ダメだと思っています。
基本はああいうところであんな風に暮らしていて、でも夢を持って生きているあなたたちはすごいって目線でずっとつくってます。
飯も、それを撮るだけのために重い一眼レフをわざわざ抱えて行って撮っているんです。
だから、飯を食う瞬間だけ質感が違う映像になっているんですよ。
それもやっぱり彼らがうまいうまいって食っている飯を最高に美味しく撮りたいという思い。
リスペクトしたいから。
美味そうでしょって出したい。

これを読んで、私はVTRに登場する人々を「かわいそう」だと思っていたことに気がつきました。

自分の暮らしと比べて、衛生的にも栄養的にも全てにおいて「かわいそう」。

要は無意識のうちに彼らを下に見ていたのです。

かわいそうな人たちをそんな風に言うのはいかがなものか?という私の不快感は、正義感の名を借りた見下しが含まれていたのです。

彼らが見せてくれる食事風景は、日本人に「食べる」とはどういうことかを考えさせてくれます。

もしかしたら、彼らは日本人が働いて、食べている姿を見ても「羨ましい」とは思わないかもしれません。

番組のホームページでは、この番組をこう紹介しています。

食うこと、すなわち生きること。
食の現場にすべてが凝縮されている。
これは、ヤバい人たちのヤバい飯を通して、
ヤバい世界のリアルを見る番組。

「ハイパーハードボイルドグルメリポート」は日本人に欠けている「何か」を考えさせてくれる番組です。

Amazonビデオで本編が観られる他、Youtubeの公式チャンネルでスピンオフも視聴可能。

オススメです。

☆こんな人にオススメ☆

・「食」について考えたい人。

・ドキュメンタリー番組が好きな人

・人の「生き方」を考えたい人

(Amazonビデオのページに飛びます)

 

 

ディレクターインタビュー記事(外部)

ネットで話題『ハイパーハードボイルドグルメリポート』上出Pが語る キーワードは「やさしい」(前編)

"テレビ嫌い"だったプロデューサーが「そもそもなんで?」と問い続けた、"伝わる"番組のつくり方(後編)

 

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