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これまで2回にわたり記事にして参りました、「野生動物への餌付けの話」。
第1回では餌付けがもたらす自然への悪影響について、
つづく第2回では、与えられたエサをめぐって発生したキツネとカラスの争いについて書きました。
どちらも、
自分の行為がもたらす影響力をよく考えなければならない、
という趣旨の記事です。
最終回となる今回は、餌付けされたキツネたちの顛末についてお伝えします。
Contents
姿を消したキツネたち
お寺の周辺に餌付けをされたキツネが出没するようになって、数か月……
2匹だけかと思っていましたが、どうやら子キツネを含めて5匹ほどが住み着いていたようです。
年度初めのうちは体長30㎝ほどしかなく、愛嬌たっぷりだった子キツネたちも、
餌付けの影響もあってか、順調に成長を重ね、
いつしか親キツネと変わらぬほどの大きさになっていました。
大きくなったとはいえ、好奇心旺盛な子キツネたち。
相変わらず境内のあちこちでフンをしたり、穴を掘ったり、
池の鯉やカルガモを襲ったり、
元気に悪さをしていました。
境内でキツネの姿を見かけるたびに竹竿を持って追い回していた久保田。
「迷惑なキツネじゃ!」とは思いつつも、
間近で成長を見守っていたせいか愛着も湧き始めていました……
そんな矢先のことです。
お盆が終わったころ、夜中にキツネたちの異常な鳴き声を聞いたのを最後に、
パタリとその姿を見なくなってしまいました。
キツネが消えた理由・・・?①
姿を見せなくなったキツネたち。
それから数日して、その理由がわかります。
いつものように外で敷地の整備をしている最中。
畑に生えた雑草や、片付けた枝葉などを投げ込んでおくゴミ捨て穴の中で……
1匹のキツネが死んでいるのがわかったのです。(※画像は寝ているキツネです。)
死体を確認したのはその1匹だけですが、
おそらくキツネたちは全頭死に絶えたのだろうと思われます。
キツネを見かけなくなる前に聞いた、異常な鳴き声。
あれはきっと、キツネの断末魔の叫びだったのだと気が付きました。
キツネが消えた理由・・・?②
突然のキツネの死。
それも恐らくは全滅です。
通常の状態ではまずありえないことですが、一体キツネに何が起きたのでしょうか?
……
実は今年、お寺の周りではキツネだけでなく「野ネズミ」が大量発生していました。
そのことを裏付けるかのように久保田自身も外での作業の際に、
草むらや藪の中に隠れるネズミの姿をちょくちょく見るようになっていました。
キツネも問題ですが、言わずもがな、ネズミも迷惑な害獣の代表格です。
特に今年は、農作物や樹木の食害が深刻化していました。
お寺の畑に植えているジャガイモやニンジンなどの根菜もかなりの被害を受けていました。
そして、どうやらネズミの駆除を目的に殺鼠剤を撒いた家があったようなのです。
キツネは野ネズミを捕食します。
つまり……
あくまで推測でしかないのですが、殺鼠剤によって死んだ野ネズミをキツネが喰らうか、
あるいは殺鼠剤の入った餌をキツネが直接食べてしまい……
結果的にキツネも殺鼠剤の毒を受けて死んでしまった可能性が高いのではないかと思われます。
(※ 毒餌の害はペットや乳幼児に及ぶこともあり、また毒餌の使用は法律によって罰せられる場合もあります。安易に毒餌を使用するのは絶対にやめましょう。)
自然界のバランスが崩れた?
さて殺鼠剤が使われるきっかけになった、野ネズミの大量発生ですが、
久保田はこのことにも餌付けが深くかかわっているのではないかと考えています。
ほぼ毎日パンや肉(おそらく鶏むね肉)を与えられたキツネたちは、その分だけ狩りをする必要がなくなりました。
仮に、1日あたり1匹ずつ野ネズミが見逃されたとすると、100日で100匹……
さらにネズミはものすごいスピードで繁殖する動物です。
数か月間で爆発的に増殖したとしても不思議ではありません。
(……というか、第2回の餌付けの話で野ネズミの増殖を予測していました💦)
餌付けによってキツネが十分な餌を得てしまう。
↓
キツネが捕食しなくなったせいで増えるネズミ。
↓
ネズミ退治のために殺鼠剤が撒かれる。
↓
殺鼠剤のために死んでしまったキツネ。
今回のキツネの大量死はこういうことなのではないかと推測します。
もちろん、この推測が事実であるとは限りません。
しかし今回私が目にしたのは、
餌付けという行為が自然界に想像以上の影響を与え、
もっとも残酷な結末を引き起こした事例であるように思えてならないのです。
まとめ
今回、久保田は餌付けによって自然界のバランスが崩れてしまう様子を目の当たりにしました。
餌付けというひとつの「よくない行為」。
おそらく一度、二度、人間がエサを与えたくらいではバランスが大きく崩れることはなかったでしょう。
しかし、今回の餌付けは日々繰り返されていました。
繰り返された「よくない行為」の影響が積み重なり、取り返しのつかない結果を招いてしまったのです。
こうした事例は、餌付けに限った話ではありません。
たとえば多くの人が悩まされている生活習慣病や、もっと大きな規模の自然破壊など、取り返しのつかない事態の原因となる「よくない行為」。
たとえば締めのラーメン1杯、あるいはゴミの分別をサボること1回。
それら一つ一つの影響は、ごく小さなものかもしれません。
しかし、積み重ねられた行為は確実に残り続け、後々に大きな影響を与えます。
一日一日を大切に生きるということ。
それは自分の行為の影響力を自覚しながら生きるということなのかもしれない。
餌付けについて考えるうちに、このような思いを抱くに至りました。